- 自費出版を考える
- 自費出版にチャレンジする
- 書籍/雑誌のかたちを知る
- 出版印刷の基礎知識を学ぶ
- 印刷を発注、出来上がりを待つ
- 実際の打ち合わせ
(1)仕様の決定
(2)費用見積り - 著者が取り組むこと
(1)原稿の提出
(2)納期の約束
(3)校正/校了 - 本の完成
(1)納品受領
(2)代金支払い
(3) 進呈・配布
- 実際の打ち合わせ
- 「電子出版」の動向を聞く
「自費出版」といっても、Tさんにとっては全くの素人です。費用もかかるでしょうし、何よりどのくらいの時間と努力が必要なのか、かいもく見当がつかないのですが、ともかく原稿の作成に取り掛かってみることにしたのです。
しかし、何ページにも及ぶ原稿を頭から書き下ろすことなど、プロでもない初心者のTさんには無理なことです。そこで、どのようにして書いたら効率よくまとめることができるかを知りたくて、原稿の上手な書き方についてやさしく解説してある参考書を購入、自分なりにチェックしてみました。そこには、以下のようなことが書かれていました。
きちんとした原稿にすれば、その後の修正作業も最小限で済むので、印刷会社からも大歓迎されるだろうと、Tさんは思ったのです。費用も時間も抑えられるなら、著者にとっても有難いことです。 最初にやらなければいけない、もっとも重要なことは、なぜ出版したいのか、どんな内容にしたいのか、読者対象は誰にするのかについて、企画上の信念をしっかりと固めることです。これが原稿を執筆していくうえで一種の“羅針盤”となり、具体的な全体像、言い替えれば編集の内容、出来上がりの体裁など、本づくりそのもののコンセプトにもつながっていきます。書いている途中で趣旨がふらつかないようにするためにも、最初に決めておかなければいけない必須の条件です。
このことは何も自費出版だけに限らず、およそ出版社が書籍や雑誌の刊行を企画・編集するときには、必ずおこなっている大前提なのです。コンセプトが決まらなければ始まらないというのは、製品を開発・販売するマーケティングの世界だけとは限りません。
導入に始まり結論に至る『起承転結』に沿った章建てをおこなっておくことも大切です。いわば、仮の目次設定です。第1章は何、第2章はどんなことといった具合に区分けして、全体の構成を明確にしておくことが欠かせません。そのうえで、それぞれの章に割り当てる節や項、ページ数、概算の文字数を大体決めておくとよいでしょう。途中で変える必要を感じたら、全体像をみながらそのつど軌道修正すればいいのです。
そこができていれば、思いついた箇所、書きやすい部分から手をつけていき、最後に全体をまとめるという手法を取ることが可能です。第1ページから書き下ろすより、はるかに効率的ですし、系統だった原稿が仕上がるに違いありません。
本文がひと通り完成した時点で、章、節、項の見出しや小見出しを正式につけ、そして最後の段階で、目次、序文、奥付の原稿をまとめることになります。本のタイトル(書名)も考えていかなければなりません。出版物の“死命”を決するほど重要な要素ですので、何回か推敲を重ねて自分の気に入った最適な文案を採用してください。こればかりは、下版直前まで直すことを許してくれるはずです。 パソコンで原稿が書けるようになった今では、原稿執筆とデータ入力を著者が一人でおこなえるようになりました。かつては印刷会社にいる専門のオペレータが、執筆された手書きの原稿を読みながら文字を打ち込んでいたのですが、パソコンが普及したことから、顧客が自分で入力したテキストデータを印刷会社に持ち込めばよいように、時代が変わってきているのです。
自宅のパソコンに搭載されている一般的なワープロソフトあるいはテキストエディターを使って、原稿を作成することができます。印刷会社には、原稿データを書き込んだCDやUSBメモリーなどの媒体を渡せば済みます。印刷会社の人ともう少し顔馴染みになれば、インターネットを使って送信する手段も使えそうです。
原稿を作成するに当たって基本的に忘れてならないのは、本文自体を「である調」にするのか「ですます調」にするのかを最初に決めておくことです。どちらを選んでも何ら問題はありません。しかし、そこには自ずと文章の重みと格調、あるいは親近感や優しさが反映されますので、本の内容や読者対象をよく考えながら決める必要があります。そして、一度、決めたからには途中で変えないことです。両方が乱雑に混ざっていること自体、大変みっともないことですし、本の評価を下げることになりかねなせん。
辞書を傍らにおいて正しい用語、漢字、送り仮名を使用するのは当然のことです。書き上げた原稿を何度も読み返しながら、文体や構文、用語の統一、仮名の送り方などについて、入念なチェックをおこなう必要があるのです。評論家や学者が書く本の場合、通常、出版社の編集担当者が専門的にリライト(原稿修正)しますので、自然と原稿整理されるのですが、自費出版の場合は、執筆も原稿整理も一人でこなさなければなりません。印刷会社で繰り返されるかも知れない煩雑な修正作業のことを考えれば、事前の原稿整理がいかに大切かが容易に想像できます。 著者は、自分独自の文章を書くだけでなく、参考書や文献資料から文章、写真を引用することが多々あります。このとき注意しなければならないのは「著作権」の問題です。作家、写真家、研究者らに帰属する著作物を勝手に使用することは、著作者本人の権利と財産を保護するという法律の理念に反することです。もし引用するなら必要とする一部の箇所に限定し、かつ、必ず出所を付記しなければなりません。
印刷会社が印刷物のかたちで編集し製品化できるのは、複製(媒体加工)するという一定の範囲で使用許可が与えられているからに過ぎません。印刷することによって、新しい書き手(自費出版の場合は印刷発注者でもあり発行元でもあります)に、引用した著作の権利が移行することを許したわけではありません。
同じように、印刷会社がDTPを使って編集加工したページアップデータは、印刷をおこなううえで必要な情報処理、編集処理の技術料、ノウハウ料が含まれた中間生成物に当たります。原稿の著作権が著者にあるからという理由で、加工済みのデータを無償で戻さなければならない義務はありません。中間生成物の所有権は、原則として印刷会社に帰属するのです。
印刷会社が著作権とともに、このような「印刷隣接権」についても煩く言う意味には、明確な道理があるのです。
しかし、何ページにも及ぶ原稿を頭から書き下ろすことなど、プロでもない初心者のTさんには無理なことです。そこで、どのようにして書いたら効率よくまとめることができるかを知りたくて、原稿の上手な書き方についてやさしく解説してある参考書を購入、自分なりにチェックしてみました。そこには、以下のようなことが書かれていました。
きちんとした原稿にすれば、その後の修正作業も最小限で済むので、印刷会社からも大歓迎されるだろうと、Tさんは思ったのです。費用も時間も抑えられるなら、著者にとっても有難いことです。 最初にやらなければいけない、もっとも重要なことは、なぜ出版したいのか、どんな内容にしたいのか、読者対象は誰にするのかについて、企画上の信念をしっかりと固めることです。これが原稿を執筆していくうえで一種の“羅針盤”となり、具体的な全体像、言い替えれば編集の内容、出来上がりの体裁など、本づくりそのもののコンセプトにもつながっていきます。書いている途中で趣旨がふらつかないようにするためにも、最初に決めておかなければいけない必須の条件です。
このことは何も自費出版だけに限らず、およそ出版社が書籍や雑誌の刊行を企画・編集するときには、必ずおこなっている大前提なのです。コンセプトが決まらなければ始まらないというのは、製品を開発・販売するマーケティングの世界だけとは限りません。
導入に始まり結論に至る『起承転結』に沿った章建てをおこなっておくことも大切です。いわば、仮の目次設定です。第1章は何、第2章はどんなことといった具合に区分けして、全体の構成を明確にしておくことが欠かせません。そのうえで、それぞれの章に割り当てる節や項、ページ数、概算の文字数を大体決めておくとよいでしょう。途中で変える必要を感じたら、全体像をみながらそのつど軌道修正すればいいのです。
そこができていれば、思いついた箇所、書きやすい部分から手をつけていき、最後に全体をまとめるという手法を取ることが可能です。第1ページから書き下ろすより、はるかに効率的ですし、系統だった原稿が仕上がるに違いありません。
本文がひと通り完成した時点で、章、節、項の見出しや小見出しを正式につけ、そして最後の段階で、目次、序文、奥付の原稿をまとめることになります。本のタイトル(書名)も考えていかなければなりません。出版物の“死命”を決するほど重要な要素ですので、何回か推敲を重ねて自分の気に入った最適な文案を採用してください。こればかりは、下版直前まで直すことを許してくれるはずです。 パソコンで原稿が書けるようになった今では、原稿執筆とデータ入力を著者が一人でおこなえるようになりました。かつては印刷会社にいる専門のオペレータが、執筆された手書きの原稿を読みながら文字を打ち込んでいたのですが、パソコンが普及したことから、顧客が自分で入力したテキストデータを印刷会社に持ち込めばよいように、時代が変わってきているのです。
自宅のパソコンに搭載されている一般的なワープロソフトあるいはテキストエディターを使って、原稿を作成することができます。印刷会社には、原稿データを書き込んだCDやUSBメモリーなどの媒体を渡せば済みます。印刷会社の人ともう少し顔馴染みになれば、インターネットを使って送信する手段も使えそうです。
原稿を作成するに当たって基本的に忘れてならないのは、本文自体を「である調」にするのか「ですます調」にするのかを最初に決めておくことです。どちらを選んでも何ら問題はありません。しかし、そこには自ずと文章の重みと格調、あるいは親近感や優しさが反映されますので、本の内容や読者対象をよく考えながら決める必要があります。そして、一度、決めたからには途中で変えないことです。両方が乱雑に混ざっていること自体、大変みっともないことですし、本の評価を下げることになりかねなせん。
辞書を傍らにおいて正しい用語、漢字、送り仮名を使用するのは当然のことです。書き上げた原稿を何度も読み返しながら、文体や構文、用語の統一、仮名の送り方などについて、入念なチェックをおこなう必要があるのです。評論家や学者が書く本の場合、通常、出版社の編集担当者が専門的にリライト(原稿修正)しますので、自然と原稿整理されるのですが、自費出版の場合は、執筆も原稿整理も一人でこなさなければなりません。印刷会社で繰り返されるかも知れない煩雑な修正作業のことを考えれば、事前の原稿整理がいかに大切かが容易に想像できます。 著者は、自分独自の文章を書くだけでなく、参考書や文献資料から文章、写真を引用することが多々あります。このとき注意しなければならないのは「著作権」の問題です。作家、写真家、研究者らに帰属する著作物を勝手に使用することは、著作者本人の権利と財産を保護するという法律の理念に反することです。もし引用するなら必要とする一部の箇所に限定し、かつ、必ず出所を付記しなければなりません。
印刷会社が印刷物のかたちで編集し製品化できるのは、複製(媒体加工)するという一定の範囲で使用許可が与えられているからに過ぎません。印刷することによって、新しい書き手(自費出版の場合は印刷発注者でもあり発行元でもあります)に、引用した著作の権利が移行することを許したわけではありません。
同じように、印刷会社がDTPを使って編集加工したページアップデータは、印刷をおこなううえで必要な情報処理、編集処理の技術料、ノウハウ料が含まれた中間生成物に当たります。原稿の著作権が著者にあるからという理由で、加工済みのデータを無償で戻さなければならない義務はありません。中間生成物の所有権は、原則として印刷会社に帰属するのです。
印刷会社が著作権とともに、このような「印刷隣接権」についても煩く言う意味には、明確な道理があるのです。
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