印刷産業の環境対応早わかり10講
廃液はすべて回収し、きちんと処理しています
大気への影響と並んで重視されるのが水質への影響です。印刷産業は、これに関しても「水質汚濁防止法」の規制に従って、有害物質の浄化処理、流出防止に取り組んでいます。印刷工場では、現像廃液、湿し水廃液、洗浄廃液など、製版・刷版・印刷の各工程で発生する全ての廃液を、適切に回収・処理することに気を配っているのです。湿し水を使っておこなうオフセット印刷の場合、印刷機の給水ローラー部と湿し水タンクはクローズドな状態で循環するシステムになっているため、印刷の最中に出る排水は全くありません。環境負荷はないということになります。しかし、長期間使っていると紙粉やインキ成分などでだんだん汚れてくるため、定期的に湿し水を交換しなければいけません。このときに環境負荷が生じるのですが、環境保護を第一義に考え、濾過装置の接続により廃液の循環回収をおこなうとともに、最終的には専門の産廃業者に処理を委託しています。
湿し水の廃液処理を産廃業者に委託すると必然的にコストがかかってきます。これをできるだけ回避するには、循環タンクへ不純物が混入する量を減らして、液交換の期間を長くする必要があります。そこで、インキローラーや湿し水供給装置の日常的な手入れ、印刷機自体の丁寧なメンテナンス、フィルター交換による濾過効率の向上などに取り組んでいます。決して表面に出ない行動ですが、これも立派な環境対応なのです。
かつてフィルム現像が基本だった製版作業が、コンピュータから刷版へレーザーで直接、画像を出力するCTPシステムに切り替わったことに伴い、製版の工程で現像液が必要でなくなりました。また刷版工程においても、現像処理液を全く使用しないCTP、あるいはアルカリ現像液以外の処理液でおこなうCTPの技術が開発されていて、VOC抑制からも廃液処理からも解放されるようになっています。
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