印刷産業の環境対応早わかり10講
サステナブルな社会に貢献しています
デジタル化、情報化の進展に伴い、個別情報をネット上で受発信できる電子メディアが急速に普及しています。いまや、複製と配布を前提とする紙メディアに匹敵するほどの勢いを見せています。そうしたなかで、ペーパーレス時代の到来が往々にして叫ばれることがありますが、果たしてそうでしょうか。エコ意識が高い現代にあっても、紙と印刷は決して地球環境を阻害するものではありません。印刷に使われる紙が、きちっと管理されて森林からつくれたものであれば、資源を無計画に伐採する要因にはなりません。生き生きとした森林は、大量のCO2を吸収し酸素を生み出してくれます。紙は、石油からつくられるプラスチック類と比べるまでもなく、再生可能で生分解性のある優れた素材ということができます。望ましいリサイクルによって継続的に紙が提供されるなら、印刷メディアは電子メディアを上回る環境貢献度を発揮します。
環境先進圏・ヨーロッパでの分析によると、印刷物を読むまでに必要なCO2は、端末の電子デバイスを使用するときに発生するCO2より少ないことが判っています。CO2の発生量を、一定時間読むことを条件に新聞の例でご紹介すると、電子版は、購読者が多いほどデバイスを見るための電力消費が増えてしまいます。長時間受信するほど、電子メディアの電力消費は増え続け、その分の発電に要するCO2発生が環境負荷の増大につながってしまいます。この点、新聞は繰り返し何時間読んでも不変なのです。
人間一人が使うための紙をつくるのに要するエネルギーは、たくさんの電子機器を製造し、それをネット上で運用(配信、閲覧)する際のエネルギーより小さいのです。これは新聞に限らず、書籍や雑誌、チラシやカタログといった一般的な印刷メディアにも当てはまることです。印刷物を製作するためには、確かに紙、インキ、刷版といった資材や薬品を使用し、印刷機械、製本機械を電力で稼働させなければなりませんが、このような製造、物流(納品)に要するコストを補って余りあるほど、保存して繰り返し読める印刷物は環境に大変やさしいということが解ります。
森林管理、製紙、印刷のプロセスは、サステナブル(持続可能性)な社会にマッチしているのです。印刷産業ではこの強みを生かすために、環境にやさしい紙を積極的に採用するとともに、製造面おいても資機材の適正化、ムダ・ロスの排除、生産性の向上、輸送の効率化などに真剣に取り組んでいます。「環境に配慮した印刷物」を提供することで、エコ意識を高められているお客様のニーズにお応えしています。
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