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  「平成26年新春講演会」講演録 (平成26年1月23日)
今という時代と経営者の使命
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       講師 経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO 冨山 和彦 氏

これは、日本の儲かっている製造業を利益率という観点で上から並べたものです。これは円が80円ぐらいのときです。こんなに儲かっている会社がいっぱいあります。この共通点は、「ポット出ではできない仕事」ばかりです。その会社が積み重ねてきた技術、蓄積技術、お客さんとの関係性で、成り立ってきたゲームなのです。  
だから、ジョブズと対峙した時の当時のiPodのゲームや、iPhoneのゲームというのは、「アイドル歌手との戦い」なんです。昨日今日に出た若いやつが勝つんです。そこに50過ぎのおじさんとかおばさんが出てても勝ち目はないです。そういうゲームではない。ですが、「キョンキョン」に仕事がなくなるかといったら、なくならないのです。「キョンキョン」には、ご存じのように、アイドルのお母さんという仕事が残っている。
だから、ビジネスの世界というのは幸いなるかな、「何でもかんでもゼロリセットされてしまう事業」とは限らないです。野球は、残念ながら毎年0勝0敗、リセットですね。来年、今度のシーズンはどこが優勝するかわかりません。日本のプロ野球もアメリカのプロ野球もそうです。けれども野球の過去累積の勝敗数を調べるとおもしろいのですが、累積勝率は、セリーグのトップは当然ジャイアンツです。2位がどこだかわかりますか。手を挙げてもらいましょう。  
2位がヤクルトだと思う人――これはあまりいないですよね(笑)。  横浜だと思う人もいないですよね。広島カープもいないですよね。阪神か中日ですね。  
阪神だと思う方。  
中日だと思う方。  
答えは中日でございます。阪神ファンはごめんなさい。次が阪神です。  
ところが、この間は結構空いていまして、ジャイアンツが5割7分ぐらいの勝率で、中日が5割3分ぐらいです。今年仮にジャイアンツが0勝140敗で、中日が140勝0敗でも、実はこれはひっくり返りません。  
ビジネスの世界には、実は通算勝率で今年の順位が決まってしまうようなビジネスもあるのです。さっきソニーの話をしましたが、今から30年前、40年前の時点で、アメリカ人の一般消費者にとってソニーに相当するような、最もイノベーティブでアメリカ人の生活を変えてきた電気メーカーがどこだったか想像つきますか。自動車の中ではGMよりもフォードです。魂に響く会社、これはやはりフォードなのです。フォード生産システムは小学生でもみんな知っています。  
多くの電化製品を発明したのは誰ですか――エジソンです。エジソンが作った電機メーカーはどこですか。GEです。GEという会社は、1970年代頃までのアメリカ人にとっては日本人にとってのちょっと前ののソニーのようなイメージの会社だったのです。アメリカを変えた会社なのです。あるいは、アメリカ人の生活を変えた会社なのです。モスト・ロマンティッカリー・イノベーティブな会社なのです。ところが、そのGMも年をとります。そういったことがだんだんできなくなって、むしろ当時勃興してきた日本メーカーにパワーゲームで負け始めます。  
そこでジャック・ウェルチが登場します。ジャック・ウェルチはもうめちゃめちゃな選択と集中を主張します。彼が何を残したか、あるいは何を止めたか。よくいわれるのが、「1位、2位以外は止めてしまう」という話がありましたよね。もっと正確にいうと、1位、2位たることが意味のある事業だけを残した。かつ、自分たちが1位である。要するに、今年1位であるというのは、多分来年も1位だろうということは、さっきの議論ですね。ことし1位であるという蓄積が来年ものを言う産業です。残したのが、航空機エンジン、発電関係の重電、それから医療機器。止めたのがコンピューター、半導体、家電、それも茶物、オーディオビジュアル系で、白物は残しています。要は、「蓄積がものを言うもの」だけ残しています。ベテランの味が生きるものだけ残しています。  
航空機エンジンや発電タービン、どんなに発明力がある人間がゼロからやっても、今と同じようなレベルのものは作れません。猛烈な経験技術の蓄積です。あの中で何百枚という羽が回っています。鋼鉄の羽ですが、タービンが回っているところの温度は鉄が溶ける温度です。回しながら、回すスピードで空冷させながら、溶けないように回します。これは「科学ではない」のです。ほとんど「経験技術」です。印刷もそういうところがありますが、非常に経験技術の積み重ねなので、同じことは絶対できないのです。あの発電効率は不可能なのです。これは航空機エンジンも同じことです。部品点数が何万点ですから。  
それで、うまくいかないのも実はよくわからないのです。今、787のバッテリーの問題がありますでしょう。あれは何で起きるのか厳密にはわからないのです。今だにわかっていません。ああいうところのエンジニアリングというのは、とりあえずこれかもしれないと、いくつかまとめて手を打つのです。手を打ってみて起きなかったら、それでオーケーなのです。それはどういうメカニズムで起きないかということはほとんど解明されないまま前へ進んでいってしまう、そういう世界です。この世界というのは「能年玲奈」よりも、やはり「キョンキョン」のほうが強いです。
ですから、日本のものづくりも実はそこが強いんです。「熱と質量が加わるところ」というのは、経験蓄積が大事です。ですから、先ほど挙げたファナック以下、大体そういう系統の会社ばかりです。これは、BtoCでいったらBです。BtoCというのは、好き嫌いの感性という訳の分からないものに振り回されるのです。これはまた、好き嫌いというのはコロッと変わってしまうのです。不連続です。ところが、BtoBは機能ですから、機能軸というのはコロッとは変わりません。買う側が経済的動機づけでモノを買っていますから。皆さんのお客さんもそうだと思いますが、そういった意味合いでいうと、これは「ものづくりのすり合わせ」「お客様とのすり合わせ」が大事なのです。
ちょっとマクロな話をしますが、ここにぴったりフォーム業界がはまるかどうかはともかくとして、また全体の話に戻ります。私は、時代は結構いい方向に向いてきていると思っていて、非常にいい感じです。何がいい感じかというと、いま日本が直面している「高齢化の問題」「介護の問題」「医療機器の問題」、いわゆる課題先端分野です。これは典型的な「複合すり合わせ技術」です。ロボティクスも同じくであります。やはり日本は本当は強いのです。  
それからエネルギー関連。これも大変な蓄積技術です。電池というのは本質的には材料技術でありまして、材料というのは、インクもそうですが、結局よくわからないのです。結果的にこうなるからこうではないかという世界です。コンパウンドがなぜこんなに調整がうまくいくかというのは解明されないまま先へ進んでいってしまって、電池でうまく機能しているような材料、いくつかのキーマテリアルは日本が強いのですが、こういった領域が重要になってまいります。  
エネルギー関連は、当然 熱と質量が関わりますから、これはさっきの発電単位もそうですが、日本は強いです。そういった意味合いでいうと、日本の会社は非常にいい風が吹いてきていると私は思っています。特に製造業、ものづくり関係にとってはいい風が吹いてきていると思っています。  
さりながら、漫然とやっていればいいというわけではなくて、その一方で、もしそういった分野に集中していくのであれば、やはり選択と集中をやらなければいけないです。そうではないものは止めていかなければいけないわけです。例えば「ソニーがいつまでTVをやるのでしょうかね」という問いに答えなければいけなくなるのです。ずっとシャッフルは続けなければいけなくて、先ほど申し上げたように、半導体も当初はこの部類でした。ところが、途中からDRAMなどはパワーゲームに変わってしまった。ですから、そこで本来は取捨選択をすべきだったんです。そういったことも見つめながら、常に自分たちのやっていることを見つめ直す。  
これは皆さんが関わるようなアウトソーシングも同じです。日本の会社はなぜかアウトソーシングが下手くそです。アウトソーシングというのは「機能の選択と集中」「機能の新陳代謝」なのです。例えば 上位概念でいうとERP(Enterprise Resource Planning )というコンピューターシステムがあります。勘定系のシステムなので、日本の会社も大企業に限ってカスタムメイドで一生懸命作り込むのです。ERPでせっかくSAP(欧州で最大級のソフトウェア会社)のものがあるのに、そのまま使わないで現場がそういっているということなのでと、馬鹿みたいにたくさん改良してしまうのです。ですが、電機メーカーが、自動車メーカーが、どれだけ素晴しい勘定系のERPを持っているかどうか、電気製品を買うときに、自動車を買うときに、皆さんは気にしますか。関係ないんです。それは競争領域ではないのです。だったら、一番単純な標準品を買ったほうがいいのです。そこで競争しているわけではないのだから標準システムにして、標準にできなかったら、作業を標準に変えてもらえばいいのです。これも一つの取捨選択です。これはトップがやらなければ絶対ダメです。
コマツという会社が好業績で割と名が知れています。コマツも2000年当時ERPを入れたそうです。あっという間に、現場からは、これはこう直したいとリクエストがいっぱい上がってきます。結論からいうと、そのとおりにしていたら大変なことになるので、トップダウンで一切許さなかったそうです。結論は「黙れ。うるさい」です(笑)。
だって、「コマツはここで競争していないじゃないか」と。お客さんが払ってくれるのは建機に払ってくれる。コマツ会長の坂根正弘氏は『断トツ経営』という本を書いていますが、ERPが断トツだからというのは、はっきりいって関係ないです。「断トツにしなければいけないところ、即ち 建機の中で本当に勝負しなければいけないところは、徹底的に作り込んで、カネと時間をかけて、すり合わせもやって作り込む。そうでないものは標準品でオーケー」というのが彼の割り切りです。これは多分皆さんの業務の中でもきっとあるはずです。「どこにこだわるべきで、どこにこだわるべきではないか」。
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