日本フォーム工連について
トピックス&ニュース
委員会情報
セミナー・イベント
各種データ
出版物案内
会員企業の紹介
会員企業掲載お申し込みはこちら
お問い合わせ
セミナー・イベント
   

  「平成26年新春講演会」講演録 (平成26年1月23日)
今という時代と経営者の使命
(5)
       講師 経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO 冨山 和彦 氏

では、「日本のトップ電気機メーカーはそんなことがわかっていなかったのか」と。みんなこのことはわかっていたのです。だって繰り返しているわけですから。1回目はともかく、2回目、3回目はわかっています。では「なぜコンソリデーション(統合)できないのですか」というところになるのです。  
再生機構ができた2003年から2004年頃に、既にリチウムイオンであれ、大型液晶であれ、コンソリデーションという議論はしていました。再生機構のお金と仕組を使って進められないかということで、ずいぶん官民の方々とも話をしました。  
皆さん、これも同じことをおっしゃっていましたが「いや、冨山さん、そうだと思う。やらなきゃダメなんだよね」と。「何社も国内で競い合っていても過当競争になるだけで」ということも言っていました。ですが「なぜコンソリデーションが嫌なのか?」みんな自分がコンソリデートする側という前提なのです。全員「自分が他社をコンソリデートする」という前提でコンソリデーションを語っているのです。これではコンソリデートは起きないです。M&Aでいうと「みんな買いたいと思っているが、売りたいと思っていない」のだから。では、なぜそうなるのか。「だって、まだうちの液晶は黒字なんです。うちの液晶は」「売り上げも増えているのです」「右肩上がりで黒字の事業を日本の会社では売れないでしょう。それでコンセンサスを作れないでしょう」ということです。  
さっきと同じ話です。「赤字でさえ創業の繊維は売却できなかった」のです。ましてや「黒字で右肩上がりの産業で、結構大きな売り上げを占めている事業を、他社に何がうれしくて売却できましょうか」と。では、どこでコンソリが起きるか。大赤字にならないとできないです。大赤字になるときというのは、もうゲームの勝敗はついています。「All Too Late」なのです。これがこの業界の歴史の一つの側面です。  
もう一つの側面は、液晶にしても、半導体にしても、当初は現場力、実行力が凄く大事な産業だったのです。製造を始めて、プロセスエンジニアリングもちゃんとやって、歩留まりを上げていく作業。半導体などはもの凄くいくつもの工程を経ます。ステッパーがあって、何十という工程を経て、90何%の歩留まりを作ろうと思ったら、これは大変なわけです。歩留まりを高めていく作業というのは、まさに「日本型すり合わせ」が昔はものをいっていたのです。  
ところが、だんだん市場が大きくなっていって、技術が練れてまいります。技術が練れてくると、「すり合わせ」はあまり大事ではなくなってきてしまいます。装置メーカーから最新の生産装置を買い集めれば、誰でも同じことができるようになってしまいます。そうすると、勝負を決めるのはどのタイミングで、どれだけの設備投資をするかというディシジョンになります。  
サムソンという会社は、オーナー創業経営者がいまだに君臨している会社です。恐らく、彼らを含めて数人でものを決めているはずです。1兆円ぐらいの投資もそうです。日本の電気機メーカーは、何千億という設備投資をしようと思ったら、多分印鑑の数が10個を絶対超えます。ここで勝負ありです。頭ではこのタイミングでバーンと投資をして工場を作ったほうがいいとわかっていても、ボトムアップで意思決定をしているとそのタイミングで投資ができないのです。パワーゲームというのは、「トップダウン型の方が強い」ということになってしまうのです。  
この二つが原因でこういうことになっています。今の話でいうと、一つ目の問題は克服していかなければいけないという話ですが、二つ目の問題は、結構根が深い問題であります。私自身は「一人か、ほんの数人でものが決まるような、ダイナミックな意思決定をするような企業体に日本のサラリーマン経営の大企業がなれるか」と問われると多分これはなれません。あるいは無理があります。
別の例を紹介します。ソニーとアップルです。皆さんご存じの2社です。ソニーとアップルは、今、完全に明暗が分かれています。アップルは、そろそろ陰りが見えていますが、今のところ調子がいい。ソニーは不調です。平井さんも大変苦労されていますが、このクロスロード、道が分かれたのは今から12年前のiPodが出た時に。当時はiPod対ウォークマンでした。この時に明暗が分かれたとされています。  
この経緯については、ソニー本がいっぱい出ていて、当時ソニーはあらゆる技術を持っていました。アップルが持っているものでソニーが持っていないものは一つもなかった。「あらゆる要素技術を持っていて、ウォークマンのブランドも持っていて、それがアップルにやられたということは、当時の経営陣がダメだったのだ」と、大体こういう説明です。  
ただ、私に言わせれば、そういう説明をしている奴がダメです。(笑)
よく考えてください。あの時点のソニーは、既に創業から55年経っている結構古い会社です。オーナー創業経営者はもういません。従業員は20万人で、ビジネスは非常に多様化していて、かなり分権化が進んだ組織です。トップはソニー史上初めての完全なサラリーマン経営者です。出井さんという方は、新卒でソニーに入社にして社長になった人です。要するに、つい昨日まではただのサラリーマンです。  
もう一つのアップルは、創業経営者だったジョブズが復帰したばかりです。はるかに若くて小さい会社です。ジョブズという人間は、絶対物事は自分の決めたようにしか決めない人間です。昔、それをやり過ぎて1回追い出されたわけです。やはりそういうものが必要ということで、彼はまた戻ってくるわけです。相変わらず同じスタイルです。彼が一人ですべてものを決めます。彼の好き嫌いでものは決まっていきます。iPodの周りを何であんな筐体にしたのか。それはジョブズが好きだからです。別に機能上あれである必要はまったくないです。ジョブズが、これがクールだと思ったから決めた。  
ソニーはどうなっているか。例えばiPodと同じビジネスモデル、iPodはインターネットとの統合モデルでしょう。さあ、どこでやりますか。エレキでやりますか、それともソネットをやっているインターネットモールでやりますか。これは音楽ICだからソニーミュージックでやるのですか、それともインターネットベースのいろいろなお客様との展開性を考えたら、ソニー・コンピュータエンターテインメントの久夛良木さんのところでやるのですか。みんなやりたがりますよね。これはきっとパッと決まらないですよ。みんな一国一城の主ですから。出井さんが「右」といっても、「いつからおまえはそんなに偉くなったのだ」となってしまいます。  
仮に エレキ部門でやると決まったとしましょう。では、音楽のコンテンツをどこから入れるのか。ソニー・ミュージックエンタテインメントを優先するのか、しないのか。関係なく全部平等にやるのか。これはきっともめますよ。従来、CDのビジネスモデルだった時代ですから、彼らがインターネット配信なんて、敵もいいところでしょう。絶対「ちょっと待ってくれ」になるのです。「どうせやるのだったら、最初はソニー・ミュージックエンタテインメントのコンテンツだけにしてよ」となるのですね。というようなことを決めているうちに、アップルはポンポンものが決まっていくのです。ここで勝ち負けが決まってしまうのです。
ソニーが唯一勝つことができる可能性があるとしたら、二つ。一つはアップルを買収してしまうしかなかったのです。買収してジョブズのやりたいようにやらせる。もう一つは、タイムマシーンを発明して、若い盛田さんを連れてくるんです。盛田さんが来れば、盛田さんのいうことはみんな聞きますから。  
ソニーのCD、コンパクトディスクがありますね。あれはソニーが社運をかけて開発した商品です。CDの第1世代の長さはたしか74分です。これは何で74分に決まったか知っている方はいらっしゃいますか。――どうぞ。  そう「カラヤンの第九」を当時の社長だった大賀さんが1枚で聞きたかったんです。これ、ふざけていませんか(笑)。  
この中で、第九のCDを持っている方はどのくらいいらっしゃいますか。―こんなものでしょう。  
普通、あれを基準にしないでしょう。LPレコードの代替品ですから、LPレコードで一番売れているものを調べると思います。洋盤だったら、ビートルズの青盤が多分一番売れていたはずなのですが。そういうのではないんです。だから、ジョブズが「筐体はチタンがクールだからいい」というのと同じような決め方が昔はできたのです。それは、大賀さんまでは創業世代からです。きっと中には「このふざけた親父」と思った社員がいたはずなのです。「おまえの趣味で俺たちは作っているんじゃねえぞ」と思っている人もいたはずなのですが、創業世代の親父さんでしょう。「しようがねえな」と言うことを聞くのです。これは出井さんには無理です。  
これは、ある意味では組織の背負っているイメージに近いものがあるのです。55年たってしまっているから、これは変えられないでしょう。では「古くて大きな会社がやることは悪いことか」そうとは限らないです。
←前のページへ 次のページへ→
   
    Copyright (C) 2007 JAPAN BUSINESS FORMS ASSOCIATION. all rights reserved.
業務委員会
資材委員会
国際委員会
市場委員会
技術委員会
環境委員会
会長あいさつ
概 要
あゆみ
事業活動
役員紹介
各地区事務局連絡先
理事会情報
規 定