「かわいい子には旅をさせろ」ではないですが、ハラハラしながらでも一人で大阪の姉のところまで旅させたことがありました。小学校 3年のときです。それを覚えたら今度娘が一人で出ていくようになってしまいまして、中学校時代、高校時代と海外などに一人で出ていました。でも、親はいつも心配していますが、そういう体験をさせないかぎりは若い子は育たない。 よく二代目さんが私のところに来ます。そうすると二代目さんはよく「先生のところでいろいろアイデア練って、社長のところに持っていってもほとんど蹴られる。どうやっておやじをくどけばいいのかな」というのです。おやじさんは、自分の長年の経験、それこそオイルショックをくぐり抜け、バブル崩壊もくぐり抜けてきた。三つも四つも山あり谷ありの人生を歩んできたから経験は豊富ですから、「そんなことやってうまくいくはずないだろう」といいたいのですが、それが企業にとって大した損失にもならない、体験させてやるには手頃ではないかという判断をするのだったら、私はやらせてやらなければいけないのではないかと思います。失敗したことは必ず人生の流れのなかにおいてはいい経験であり、そうやって人は育っていくのではないかと思います。 トライ・アンド・エラーというのは、エラーが会社の存亡に関わるようなことではいけないですが、実際に小さな計画のなかにおいての行動であれば、やらせてやることのほうが後継者が育っていくのではないかとよく思います。
割なら3割減るのだったら、3割減った売上で損益分岐点になるような人材と固定給をどこで節減していくかということですが、もうとっくにトヨタさんはやっています。それが内なる守りの戦略です。品質、コスト、納期、損益分岐点を考える。まずはそれだと思います。 ただし、戦略というのは、単一的な戦略ではないと思います。先ほど言った現在のビジネス領域で内なる守りの「戦略」とはいわない。一般的には「戦術」のレベルです。戦術のレベルですが、やはり戦略としてとらえたほうがいい。ですから、まずは内なる守りの戦略というのは、中期の戦略ではありません。これは四半期ごとくらいで改革できてきますから、これを短期の戦略ととらえていけば、並行して動かさなければいけない。 ですから、皆さんたちも考えなければいけないのは、いかに損益分岐点に合う社内体制をつくるかということです。これを考えるのが一番大切で、これはスピード感をもってやらなければいけない。今それをやるんだよといったら、もう来月か再来月はその体制で動かす。動かしたら、ちゃんと四半期ごとにその目標管理をしていく。これをやるのが最初です。これはあくまでも短期の戦略です。 中期は、やはりBのフロンティア領域で、そういうところを見つけていかなければいけない。企業経営している限り、売上は右上がりを望まない限りはビジョンはあり得ない。夢ではあり得ない。ありたい姿ではあり得ない。ですから、礎となる攻めの存在というのは、これはひとえに営業力の強化でしょう。営業力、営業の再構築です。営業力の強化です。いかにほかの市場に殴り込みをかけるか。ないしはライバルに勝つか。これしかないわけです。 あと、Cの新製品のほうは、ウオンツを求める努力。差別化というのは深耕しなければいけない。自分のところはいろいろな製品をつくっているが、将来的にはどの製品がいいのだろう、そこに集中させます。何を選択するか。選択したものに自分のところの経営資源を集中させていく。そして深耕する。これで差別化していく。すべてで自分のところが強くなるというのは難しい時代になりましたから、自分の会社の性質、環境からすると将来的にはこういう製品に集中させていこうと考える。ですから、逆にいうと、多角経営からある程度絞り込んでいくというやり方が一般的な中小企業には合っているのではないか。 大企業というのは多角経営してもいい。それだけの資金力もあるし規模を持っています。でも、中小企業はあくまでも絞り込みをしていく方向性に今はあるのではないかと思います。絞り込んだ中で大企業と戦っていく。大企業が手の届かない、かゆいところまで手の届く自分たちのコアな技術で守っていく。Bの方向とCの方向を常に模索し、努力、苦労していると、潜在の道筋が見えてくる。つかめる。そのチャンスです。 ニッチ戦略はオンリーワン戦略です。オンリーワン戦略は、ランチェスターの法則ではないですが、シェアというのは42%とったもの勝ちということがあります。42%を取るとだいたい市場が自分の思うようになる。早めに42%を奪取したら、大手でも入ってこれないようになる。 市場競争というのは、一般的に日本には500 万の事業体が存在します。日本が500 兆円のGDPだとすると、1企業当たりの売上は1億円です。そうすると、1ロット1億円という事業を考えていけばいいわけです。ですから、新しいことをやろうとするときに、1ユニットの市場規模は1億円くらいでみていれば一番いい。1億円が10個集まって10億円だよという考え方をすると一番わかりやすいかと思います。この10億円が100 億円になるとだいたい大手が相当商圏を荒らしてきます。その辺のことを皆さんよくお考えになられたらいいと思います。 大手の広告代理店さんがそうです。電通さんとか博報堂さんとか、今、アサツー・ディ・ケイさんはよく一緒にボランティア活動のプランを立てましたが、アサツー・ディ・ケイさんもそうですが、「今度、ぼくの友達がこういうことをやりたいというけど、手伝ってやってくれへん?」というと、「いいよ、いつでも会うよ」といって会うと、「ところで、1 年でどれくらいの売上になる? 」という。「1年で2,000 万円? そんならやめておきましょう」という。 紙媒体というのは苦労する割には1月に100 万円程度の売上にしかならないから、やらないです。営業を出すのはもったいない。そんな紙媒体で1カ月で200 万円の仕事を取って、自分のところが2割、3割ピンハネしても、電化媒体だったら10分の1の力も入れなくて取れてしまいます。ですから、紙媒体というのは意外と広告代理店さん一つだけでは動かない。そんなことがあるのではないかと思います。