日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録

 技術セミナー
「顧客感動」を呼ぶ印刷機械の予防保全

講師 川 名  茂 樹 氏
小森コーポレーション
サービス技術本部日本サービス部サービス2課課長代行
予防保全チーフアドバイザー
 
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<15.三つの保全 その3「品質確認保全」品質確認の為に>
  次は、その投げた球が本当にストライクなのかボールなのか、この判断をしなければならない。これが「品質確認保全」と私が名付けたものです。
印刷品質そのものが商品になりうるかを確認すること。これはどこの会社も必ずやっておられます。ノーチェックで出すところはありません。けれども、それがきちんとした管理項目とされているかどうかは、また別問題です。
  AさんがOKしました、BさんがOKしました、CさんがOKしました。そのとき、Aさんはちょっと調子が悪かった、調子が悪くてもOKした、こんなことがないでしょうか。
  人間というのは年をとってまいりますと、だんだん世の中が黄色っぽく見えるそうであります。これは老化ですから仕方がないそうです。
 
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ですから、ここに顧問の方がいらっしゃったらお詫びいたしますが、顧問の方が色チェックをして、「黄マイナス、これも黄マイナス」と言い始めたら、ちょっと引退していただいたほうがいいかもしれません。
  あるいは、人間というのは怒りの感情で「目が血走っている」といいますが、本当に血走るとものが赤く見えるのだそうです。ですから、「赤マイナス、赤マイナス」と言い始めたら、これはちょっとやばいなと思ったほうがいいようです。
  つまり、人間の目というものは非常にアバウトです。Aさん、Bさんも違います。我が社の本当のストライクゾーンは何なのか。Aさんに頼むとしても、どういうレベルの判断をするかを決めることです。80%は機械のデジタルデータ、あとの20%は人間の目、こういうように意識化することが必要だと私は思っているわけです。
  そのためには、このようなカラーパッチ、あるいはデジタルデータで測定するものが必要だろうと思います。

 
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 私がご紹介させていただいているのは、朝日新聞さんです。朝日新聞さんでは朝刊のテレビ欄の端に12個のカラーパッチを印刷しております。これは毎日印刷しております。
 朝日新聞さんは全国に22工場あります。そして60セット稼働しております。この60セット全部でやっていまして、全データを毎日本社に上げます。それでベタ濃度とか、ドットゲイン、グレーバランス、トラッピング、スラー、ダブリ、色彩値、Lad値、見当精度の7点を全台管理して、標準化をしているわけです。
 昔では考えられなかったようなカラーのものが全国で均一に刷れるようになりました。初めは、このコントロールをやって色の安定化を図ったわけです。

 そして、次にどういうことをやったか。朝日新聞さんは、カラー広告については全部FMスクリーンで刷っています。2005年度新聞協会「技術部門賞」を受賞しています。
 この前、朝日新聞さんにいきしたら、トヨタのグレー色の高級車レクサスの広告が工場の壁に22枚張ってありました。全部の工場でこのグレーのレクサスが刷れるか。やはりグレーが一番難しいとのことでした。これらは、広告が激減しているものをどうやって挽回しようか、ということで朝日新聞さんがやられたことです。
朝日新聞さんでは3年かかってやったそうで、3年経ったときに差が出ます。つまり、品質の問題は先を見て進むということが大事だと思います。
 あるいは、最近は牛乳パックでさえ管理しています。こういう時代です。
 フォーム印刷の場合にはなかなかパッチを入れられないという条件はあるかと思います。
 しかし 朝日新聞さんではカラーパッチを入れるのに、紙面内容の決定権を持つ編集局との綿密な打合せを行なったと聞きます。また 牛乳パックのカラーパッチはデザインの一部になっています。これからは品質保証をする「ブランドマーク」のように、印刷物には常にデザインされるようにならないといけないのではないでしょうか。
 つまり、「数値管理というのは時代の流れ、生き残りのカギ」です。そして何よりも「経験、勘、職人技によるバラツキをなくす」。Aさんが見た、Bさんが見た、Cさんが見た、A機械、B機械、C機械で違うということでは、クライアントは一つですから「それはお宅の事情でしょう」ということになってしまいます。
 あるいは、問題が起こってしまった、クライアントまでいってしまった、検品だ、刷り直しだということになる。では、いったい何が問題だったのか振り返った時に、何が原因かわからない、あれかもしれない、これかもしれない、わけがわからないから全部やりなおしだ、ということではいけないと思います。ここはOKだ、では、これがだめだったのではないか、調べてみよう。ああ、これだったということになるのが一番早いと思います。全体の仕組みをつくっていただいて、どこが足らないのか、どこが問題なのかを見つけていただきたい。つまり「品質を安定させ継続するシステム構築が必要」ということです。
 こういう時代になってきたのではないかと思います。つまり「標準化を数値管理して工業製品化していく」ということだと思います。
 

 
 

<事例紹介>
続いて、きょうのお話の3番目、事例の紹介に入らせていただきます。
これは、皆さまのお手元に『印刷雑誌』というものが配られていると思います。バックナンバーです。私はこの中に去年の3月から本日の題の「『顧客感動』を呼ぶ印刷機械の保全」という題で、予防保全について連載させていただいています。
「顧客感動」というのは、我が社の企業理念ですので、それを頭につけたのですが、いままで22回書かせてもらいました。初め12回ということでスタートしたんですが、あと2回の24回で終わりにします。成功事例としてこの中でご紹介をさせていただきました。
もちろんその中には失敗事例と苦戦事例を書きました。その事例もお話ししたいのですが、お時間がありませんので、バラ色のお話ばかりさせていただきます。

 
   
 
 
<株式会社横浜リテラ様>
  まず、(株)横浜リテラ様。パッケージ印刷様です。小森の機械が5台あります。どういうことをやったのかというので経過を書いてあります。赤い丸印がお客様がやったことです。青い米印が小森、メーカーがお手伝いをさせていただいたものです。
 2001年、2002年は、突発故障も多いしどうしようかというので、ISO9001を取りましたが、なかなかうまくいかない、では、どうするのかということで予防保全に取り組み始めました。5台のうちの1台をモデル機に決めて、きちんと保全しようということを始めます。セミナーをやって、キックオフをする。お客様は、ここからいろいろなことを始めます。チェックシートを自分でつくってやってみようといってやります。
 
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 それを我々がチェックする。それから、オペレータを固定しないで、Aさん、Bさん、Cさんを職人さんにしないでローテーションにしよう。そのためには機械を標準化しないとローテーションできません。そこで小森印刷スクールがあるので来てもらって、標準というのはこういうものだと学んでもらう。そういうことを1年ぐらいやりました。5台ありますので、3台と2台に分けて現場から2名の主任さんを引っ張りあげます。2台、3台の体制をつくって、その上に課長さんがいる、こういう組織体制まできました。 

 
 

 2004年に本格的に保全をやるということで、時間をとって機械を止めて保全をし始めます。毎日始業時と終業時にやろう。それから環境も良くしよう。すぐ近くにブロアがあって熱がどんどん発散する。そうすると午前中はいいけれども、昼間になると、もう工場のなかは暑い。夕方などはもう汗をかいて半袖で仕事をしている。これでは、先ほど言ったように印刷物の網点が変わってしまいます。ダクトをつけて工場環境を改善しようではないかとなりました。小森もお手伝いする。予防保全としては、このレベルでほぼ完成します。数字はあとでご紹介します。そのあとは何をしたか。2005年は、自分たちで直せる力を作ろう。保全力アップトレーニングに入ります。
  保全するには何かが壊れた、といっても技術力が必要です。その技術力を一緒に習得しようという形になります。
  そのうち、2005年の終わりごろに印刷現場の1名の主任さんをポストプレスに異動させます。なぜといいますと、2006年、予防保全をポストプレスでもやるんだということで行ったわけです。
  私はポストプレスは専門外ですが、予防保全の考え方は同じですので、キックオフをしようということで、セミナーをさせていただきました。

 
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