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  「平成25年新春講演会」講演録 (平成25年1月24日開催)
「ファシリティ・マネジメントによる企業経営」
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"世界基準に遅れをとっている日本のファシリティ・マネジメント"
       講師 (株)エフエム・パートナーズ・ジャパン クレイグ・カックス氏
「アラインメント」の日本語の表現、FMでいうと、「正しいFMはない」というのです。では、正しいFMはないというと、例えば、私はマイクロソフトの受注を受けたことがありますが、マイクロソフトのメールルームの責任を持ちます。会社の中のメール配達の業務を受注したのです。  
皆さん、マイクロソフトのメールルームの正しいやり方は何だと思いますか。マイクロソフトに限らず、メールルームはどうやってやりますか、皆さんも受注を受ける人もいるかもしれません。誤配がない、何時までにちゃんと届ける、切手代を管理する、というのが普通にやれるメールルームの正しいやり方だと思います。  
私はマイクロソフトに聞かれたのです。「クレイグのところがうちのメールルームをやるのであれば、どうやったら他よりも上手にしてくれますか。」正しいマイクロソフトのメールのやり方は何だと思いますか。  
私たちはシティバンクのメールルームもやりました。もちろん自分の責任でしたから。大変ですよ。それに比べて、マイクロソフトはどうでしょう。誤配がゼロで、サービスが高くて、品質と内容が非常に高いのと、すごい雑でメールルームは誤配が多くて、ミスも多くて、管理もされていない。このことを考えたときに、マイクロソフトはこっち(  )寄りだと思いますか。こっち(  )寄りだと思いますか。
 こっち(  )寄りだと思う人。
 こっち(  )寄りだと思う人。
 半分も手をあげていないですね。どうしたんですか。
こっち(  )寄りなんですね。
マイクロソフトは、こう言いました。「郵便物は配達しなくていい。郵便物を見たければ帰りがてら、ちょっとあの辺に置いておけばいいですよ」といわれたのです。なぜだと思いますか。  
「お金をかけるな」といわれた。マイクロソフトのメールルームにマイクロソフトのその日の売上と商売に関係するものは一つも入ってこないのです。  
注文書も来なければ、お金も入ってこなければ、商品も入ってこなければ、全部停止です。紙ベースでやっている人は、あとあと紙の証拠を送ってくるものはあるかもしれません。そんなものはいい。あとの話ですから。  
マイクロソフトのメールルームには、会社にとって全然重要なものは入ってこないからお金をかけるな、と。シティバンクはその反対です。もう厳しかったです。私自身、マネージャーなのに、自分のメールルームに入れさせてくれないのです。管理(governance)があって、監査(audit)があって、一個一個のものがどこからどこに届けられたとか。それが止まってしまうと、金融庁からストップがかかって商売停止になるのです。厳しかったです。  
どっちが正しいメールルームのやり方ですか。正しいメールルームのやり方はないのです。アラインメントの取れたやり方が正しいのです。その会社に合ったやり方が正しい。みんな違う。だからカスタムなのです。  
一つひとつアラインメントが取れていないと、「今まで我々はこうやってきたから」なんて言っていられないです。それが正しいのではないのです。皆さんの仕事も一つひとつ、そのお客さまに合った提案とやり方が正しいのです。ほかでやってきたから正しいのではないのです。同じことを繰り返せば楽ですよ。でも、正しいのではないのです。アラインメントが取れたFMだけが正しいのです。  
もちろん、二つの事業所を一緒にして賃貸料を下げればコストは下がるのです。でも、会社にとってそれはいいですか。もしかしたら、それは二つあったほうが伸びるかもしれません。その判断をどうやって総務部長がしますか。自分の経営概念を持っているからです。その為にも、アラインメントをとるという考え方が大切なのです。
もう一つは、ブランドの担い手。これはちょっと表現を変えましたが、商売にあたって、これから生き残るために私が大事だと思っているのは、ブランドです。あなたの会社のブランドは何ですか。他社と比較して何がブランドですか。何があなたの特色ですか。ブランドをつくることが大事なのです。  
コストだけで競争したら、皆さん知っているとおり、限りなくたたかれて利益がなくなっていく。FMというのは商売的には非常にマージンの低い商売です。だったら、どうやって他社と生き残るかというと、ブランドです。「クレイグのところだったら」というのをどうやってつくるか。それは、一人ひとりの私のスタッフが私たちのブランドの担い手なのです。「あなたはうちのブランドなんです」ということを社員にいっているのです。ファシリティ・マネージャーは、評判をつくるのです。一人ひとりがすべてすることによって評判ができるので、長く話しませんが、人の商売をしているかぎり、人がブランドにつながることを一人ひとりが認識するとブランドができる、つくれるのです。  
あなたの社員で、あなたの会社のブランドの責任者と思っている人は何人いますか。または、ブランドを自分がつくる責任があると思っている人は何人いますか。または、ブランドに影響できると思っている人は何人いますか。この自覚を持つこと、これが私は大事だと思います。
会社の文化というのはあります。会社の文化の担い手が総務です。それを意識してやる総務は、やり甲斐があります。会社を影響できるのです。私は会社の中の文化を何回もつくってきました。うちの会社は、人が働きやすいところ、働くのが楽しいところ、社会貢献するところ、社長がアプローチしやすいところ、いろいろな文化をつくりました。なぜつくったと思いますか。つくるというのはいいと思ったからです。  
私は、会社の文化の担い手だと思ったから、やっちゃったのです。反対する人はいないのです。だって、他の人が、「これ、私の仕事よ」と思っている人、いますか。私は会社の文化の担い手だと思っている人、あなたの会社でいますか。いないでしょう。総務が一番影響力がある。  
環境をつくる、プロセスをつくるから、いろいろなことで会社に影響を与えることができるのです。FMは難しくない。FMは、きょうはいろいろな難しい話をしているように思われますが、実際は難しくない。  
FMは難しくない。FMはただ改善なのです。今よりも良くすればいい。だれでもできるのです。その改善のしかたは難しいかもしれません。何が難しいかというと、やらないだけなのです。皆さん、日常の仕事に追われて、去年と同じことをいまだにやっているのです。改善したいという気持ちはあるけれども、では、やっていますかといったら、やらないのです。
ファシリティ・マネージャーという人は、その環境に置かれても改善を敢えてする人がプロフェッショナルです。改善をしない人は管理総務です。その違いを知っていてできる人がファシリティ・マネージャーです。I am a kaizen ningenです。これは会社によるだけではなくて、もう性格がそうなってしまいます。  
医者は病院にいるときだけ医者ですか。私は軽井沢に住んでいて、毎日軽井沢から新幹線で通勤しています。だれかほかに軽井沢に住んでいる人いますか。ときどきいるんですよ。今、千何人かが通勤しています。  
この間、電車の中でアナウンスがありました。急病人が出たので電車の中にお医者さんいますかというアナウンスです。例えば、いたとしましょう。そのお医者さんはこう考えましたか。「私は今、病院にいないからお医者の仕事はやりたくない」といって、そのまま見過ごすと思いますか。違うでしょう。病人が出たら、「私は医者です」といっていくでしょう。
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