坂本先生の本にもありました。500人以上の方がシーンとして聞いてくれたと。あれには実は仕掛けがあるんです。
その日だけではなくて、うちは計画発表のときに人数が多いものですから、1枚の紙を用意しておく。そこに何と書いてあるか。「人の話を聞く姿勢」と書いてある。「必ず人の話を聞くときは、うなずきながら聞きましょう」「メモを取りましょう」、そのあとに、「椅子は必ず引いて座りましょう」「腕組をしない」「居眠りはしない」「頬杖はつかない」、そういうふうなことが書いてある。だから、坂本先生、感動してくれたんです。500 人以上の目がみんなそうやって聞くのですから。人間というのは、その始まる前に読んだことは覚えているものなんです。
先日も、三菱銀行の人が私どものところに来まして、「講演会をやらせて欲しい」という。その三菱銀行の人は何と言ったかというと、「いままで190 回講演会をやったけれども、こんなに感動したのは初めてです」という。
だから、講演会をやった人が感動してしまった。それは全部仕掛けがある。終わったあと、拍手がくる。みんな笑顔で鳴りやまないのです。それは教えたのです。「拍手は鳴りやまないくらいしなさい」と書いてある。
だから、私たちは、人の話を聞くときも、話し手を感動させるように聞いているのです。これは営業でも同じです。皆さんが仕事をするときも、お客さまが来られたら、全員が立って挨拶するのが立派な営業です。「この会社はすばらしい」とか「信用できる」と思う。本当なんです。多くの会社はそんなことやっていないのです。
そのために毎朝、私どもは朝礼のときに全部四角になるようにやっている。前がずれないように、きれいに見えるように線が引っ張ってある。四つ角には4人配置してある。そして各人の名札がある。その裏が鏡になっているのです。紙の鏡です。これは東急ハンズで買ってきました。
必ず途中で鏡を見て、何回か笑顔のチェックをするようにしているのです。そして四つ角に入った社員が、朝礼の間にうなづく、笑顔、表情、全部チェックしている。そして朝礼のなかで最後に、「○○さんは、うなずいていなかった」「○○さんは、表情が固い」、一人ひとりに名指しで注意する。これを毎日やっている。
そして3分間スピーチをやっていますが、3分間スピーチをしたら、来た人がだれかを名刺を聞いて、あたった人が講評することになっているのです。「○○が講評する」なんて決めていないのです。だれが当たるかわからないから、みんな必死で聞くのです。
そういう仕組みにしてあります。ほかから見た人は、「なぜそんなに指されて、すぐあんな立派な講評をいえるんですか」とみんな不思議がるのです。でも、それはふだんからの訓練です。挨拶も礼儀も訓練です。
地獄の特訓とか、いろいろあるかもしれませんが、一番の特訓は毎日のことです。毎日挨拶で訓練したり、笑顔のチェックをしたり、朝礼で「はい、はい」と何回も繰り返す。そうすると、名前を呼ばれたらすぐ「はい」というわけです。どこにいっても「はい」という。私なんか、結婚式でも大きな声で「はい」という。そういうことが習慣になってしまいました。
そうすると、何が変わるかというと、会社がどんどん変わっていくのです。それは本当に社員のために大事なことなのです。
うちの経営計画書にもこういうふうに書いてあります。これは覚えておくと便利だと思います。
「プロのビジネスマンにとって一番大切なものは、人にどう思われるかです。見た目でよい。評判でよい。実際に優秀であるよりも、優秀であると思われるほうが大事。あの人は成功しそうだと思われることが、ツキを得る必須条件、ツキは他人が運んできてくれるもの」、そう書いてある。
ですから、見た目だけでいいのです。中身なんかどうでも(笑)。我々はそれに徹しています。掃除にいくときも駆け足でいきます。それを見ている人は、「すごいですねえ」とみんないっています。私はわざと最後のほうにいって、叱咤激励しています。 全員、立って挨拶します。それだって見た目きれいでしょう。それは会社の実力にするためです。「すばらしい会社ですね」と。それを判断するのはすべてお客さまですから。私たちにお客さまを紹介して口コミするのは全部お客さまですから、お客さまにどう思われるかが大事です。
皆さまの商売だって全部そうでしょう。お客さまに「この印刷会社はすばらしい」と思われれば、どんどん受注だってくるし紹介だってしてくれる。ところが、そういう努力を意外としていないのではないかなと思うのです。
挨拶もどうしているか。私が一番前の席にいるのは、全社員と挨拶するためでもあるわけです。私が来るのはだいたい朝一番ですから。全員の社員と挨拶できるわけです。私が社員より遅かったら、その社員のところまでいって、「○○さん、おはようございます」と私が挨拶にいくのです。
だから、うちは、遅い社員はみんなのところに行かなければいけないから、大変です。先に来ていればみんな来ますから。私がだいたい一番に来ています。
挨拶もちゃんと教えています。何のために挨拶するのかということです。
コミュニケーションのため。それもいいでしょう。しかし 私どもの目的はたった一つのためだけです。「相手に喜んでもらうため」です。相手に喜んでもらうためにはどうしたらいいかと考える。だから、私は、社員のほうに挨拶にいけば、社員が喜ぶのではないかなと思っているのです。社長から社員のほう、先輩から後輩、上司から部下に挨拶にいったら、されたほうがうれしいのではないかなと思いましてそういうふうにしているのです。
そうすると、「社員が挨拶をしない」という悩みは一切解決します。「なんであいつおれに挨拶しないんだ」という。そういう問題は解決します。自分で挨拶にいけばいいのですから。
そういうものです。そうすると、挨拶されたほうが感動してやり始めるのです。それが人間なのです。「やれ」と強制されるよりも、そのほうが人間というのは早く変われる。そういうコツがある。そうすると、会社がどんどん明るくなるのです。
うちにほかの会社にいて、勉強ばかりしていた社員がいるのですが、結婚したんです。結婚したら、朝礼でこう言っているんです。「もともと私は実は性格が暗かった。古田土会計に入って2カ月ですが、だんだん元気になってきました。でも、土曜日になるとちょっとテンションが落ちるんですよ。日曜日になるともっと落ちちゃうんです。先日、奥さんに言われました。早く古田土会計にいって元気になってきてくださいって」(笑)。
会社は、とにかく中身なんかでないですが、元気に、明るく、そういうことを心がけながら現実にやっています。
その他にも、メニュー表というものも用意してあります。喫茶店と同じです。それもお客さまに選んでいただけるようになっています。コーヒーはエスプレッソ、アメリカン、ブレンド、紅茶はレモンティ、ミルクティ、アップル、冷たいものは、オレンジジュース、アイスコーヒー、昆布茶もあります。それをお客さまに選んでいただくわけです。
どういうサービスで喜ばれるかということに対して、いろいろなことを現場の人が考えてやってくれているわけです。それもすべて一つなのです。「どうしたらお客さまは喜ばれるか」ということです。先ほどお見せした我々の月次決算書も、どうしたらお客さまに喜んでもらえるか、数字のことがわかってもらっていい会社になっていただけるか、そのためにこういうふうに工夫しているのです。
きょうも美容業の方がこられて説明したのですが、「この勉強会をやる目的は何かというと、社員の給料を上げるためですよ。そして会社に内部蓄積するためですよ」というところから入ったのです。聞いているのは社員です。美容業というのは給料安いのです。
このごろ美容業と飲食業のお客さまが増えているのですが、今、美容業や飲食業専門のテキストまでつくりました。
その目的は、もっとうまく経営すれば、もっと利益を出せるのです。やり方が下手だから儲からないのです。ですから儲け方を一生懸命教えています。「その目的は、あなたたちの給料を上げるためですよ」という。
いろいろ計算していくと、「じゃ、こうなれば3,000万円利益が出ますね。3,000万円の利益が出たら、3分の1を社員に分配することは可能ですよね、社長」というと、「うん、可能だ」というわけです。「そうすると、1,000万円を社員に分配できますよね。2,000万円のうち半分は税金ですから、内部留保と税金と社員の分配でみんな3分1になりますね」。そうすると「社員の数は何名ですか」「20人です」という。そうしたら1人当たり50万円になる。「それだけもらえるんですよ」という。それは可能だというのです。
いままで1日50人お店に来てくれたのが、「1億円以上の利益を出したことありますか」と聞いたら、「ない」という。「出したくないですか」といったら、「出したい」という。計算していくと、1億円以上は無理だというのですが、出せてしまう。
「1日平均50人のお客さまが来てくれるけれども、平均55人来てもらうことが可能ですか」といったら、「可能だ」というのです。「本当は70〜80人可能だ」というのです。それは急には無理でしょうと。でも、10%上げることは可能だという。10%で、平均的にはお客さま、7,000円×0.95、それで30日稼動していて、店舗が12店あったものですから、店舗を掛けると、それだけで9,000万円以上になってしまう。金額でやると無理ですが、人数でやるとできてしまうのです。
ですから、私たちがつくっているテキストは「円」ではないのです。「人」でやっています。1日何人のお客さまに来ていただくかという目標を設定する。「人」で目標設定して数字を入れていく。そして足りなかったら、パーセントではなく、「△」で何人足りないか。きょうは25日で足りなかったら、あと5日で何人どうやるかというのを現場に考えさせるようなテキストをつくった。
現場が考えなければ会社はよくなりません。社長が考えたってたかが知れています。本当に私が思ったのは、「現場」です。「現場」が活性化することによって会社は活性化する。そういうふうに持っていくことが経営者としてとても大事なことだなと思っています。そのための道具なのです。
私は、お客さまに喜んでいただくために月次決算書とか経営計画という道具をつくります。社員はどう考えているかというと、「日本の中小企業を元気にする」というビジョンを掲げて、理念もある。ビジョンを自分たちが達成するためには、自分たちが元気でなければいけないと考えたのです。
そうすると、社員は変わってきてしまうのです。どう変わるか。例えばお客さまのところに出かけていくときに、言い方が変わる。例えば木万屋さまに出かけるときには、「木万屋さまを元気にしてきます」といって、うちの社員は出かけていきます。
帰ってきたら、「木万屋さまを元気にしてきました」といって、みんなは「おかえりなさい」という。私もそれをまねしているのです。
要するに、ビジョンを掲げることによって自分たちがどうならなければいけないかということを社員がひとりでに考え始めるというのです。そうすると、本当に会社はどんどん活性化する。
今、世の中いろいろ厳しいのは承知の上です。でも、厳しくても、お客さまはいるのです。市場にはお客さまと競争相手しかいないのです。一番勝ちやすいのは、市場の競争相手が弱いか、いないかどちらかです。そうすると絶対勝てます。うちはその戦略で成長しています。うちは今120 人いますが、会計事務所を替わるというのは、うちより悪い会計事務所からだけです。うちよりすばらしいところからは替わってきません。
うちより大きい会計事務所はまだ世の中には幾つもあります。でも、それは私どもには勝てないのです。だって、経営計画をうちほど実践している会計事務所なんかないです。大手でもないです。挨拶とか礼儀とか掃除を、20〜30人の会計事務所は変えられても、100人以上の規模になったら急に変えられません。
自分たちより弱いものを越えてやっていくというのは、商売の基本です。そして競争相手がいない勝利です。会計事務所でうちのように月次決算書や経営計画をやっているところは、ほとんどいないと思います。みんなコンピューター会社がつくった商品を提供しているだけだと思います。あれは、税を申告するだけです。皆さまのほうなんか見ていません。うちは、お客さまのために全部切り換えているわけです。「お客さまのために」ということを前面に出しながら、商品改良や受付、挨拶、礼儀、掃除などもやっているわけです。全然発想が違う。ですから、競争相手いないのです。だから勝ててしまう。
皆さまも同じはずです。理念とか志とか、経営計画書をつくって、本気になって経営しているところなんか、そんなにはないです。特に社員のことを本当に思って経営している経営者なんて、そんなにいません。そういうふうにしてやれば絶対社員はがんばります。だって、みんないい会社はそうです。先月、坂本先生が話した会社もみんなそういう会社でしょう。やればできるのです。
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