皆さんの手元にはありませんが、経営計画諸表編というのもあります。私どもの経営計画書は会計事務所としてはたぶん日本一だと思うのです。企業では我々よりすばらしい計画をつくっているところはいっぱいあります。ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。ダスキン武蔵野さん。あそこは私どものお客さまです。私たちは、小山社長からいろいろ学んでいます。形は小山社長とは少し違う別なやり方です。一倉 定さんという先生のものを基にした経営計画書です。
経営計画のなかで1年後の利益計画をつくるわけです。そして計画に対して実績を記入していくわけです。9億6,000万円粗利で2億円の経常利益を出す。12月決算で今、5月で500万円ほど利益が足りない。売上高も500万円足りない。
なぜ500万円の売上と利益が足りないかといいますと、労働保険がいままで5月に申告していましたが、7月になったのです。労働保険手数料売上高がそこで600万円上がるはずが、延びてしまっただけなのです。
新規開拓の計画も年間150件。社員ががんばっているので、私ども、きょう現在、新規開拓が102件です。ですから計画の150件をだいぶオーバーした予想になります。
私どもは一切営業活動しません。ほとんどがお客さまの紹介です。1週間くらい前に 50〜300人くらいの会計事務所の勉強会がありましたが、ほかの会計事務所の社員は、「新規開拓ができない」と発表しているのです。100人くらいの規模でも年間30〜40件くらいしか増えない。お客さまがどんどん離れていく。だからどんどん売上も下がっているわけです。今、この業界はみんな下がっています。
勉強会では「新規開拓が増えないのは、社員のやる気が足りないからだ。だから、いままで1カ月分がインセンティブだったのに、インセンティブを2カ月分にした。いままで5万円の手当てを10万円にした」と発表していました。
うちの社員にあとで、「あれ、聞いてどう思った?」と聞いたら、「情けないですね」という。「お金じゃないでしょう」と。うちの社員はそれを聞いてびっくりして、「社長、うちは古田土会計で、私、よかった」といっているのです。「あれだと、お金のためだけにしか社員はがんばらないですよね」という話をしているわけです。
私どもは一生懸命教育をやっています。何のためにお客さまを増やすかということも、「それは、私どもが発展するためではないんだよ。お客さまのためなんだよ」ということを常に言っているのです。「お客さまが増えるということは、お客さまに喜んでもらうためなんだよ。うちとつき合うと、いままでつき合っている会計事務所より絶対お客さまがよくなる。だから、今の会計事務所とつき合っているお客さまはかわいそうだ」と、常にそれを教示しているのです。
社員は信じていますもの。我々ほど一生懸命誠意をもってお客さまのためにやっている会計事務所はないと社員は思っているのです。実際はいっぱいあるでしょうけれども、社員はそう思っているのです。本当にそのために一生懸命やっています。DVDもつくったりしています。
私どもはお客さまの異業種交流会というものをやっています。今度7月14日にあります。すべてお客さまは無料です。取引が成立しても、私どもは一切手数料はいただいていません。402 社が参加してくれます。
これは社員が全員で協力しながらつくったパンフレットです。これでお客さまどうしの取引が成立すれば、お客さまから喜ばれるので、そのために社員が一生懸命考えてこれをつくって、そして7月14日は、講演会を加味してお客さまどうしお見合いしてもらうわけです。
去年は100件くらい契約が成立していますが、これに参加できるのはうちのお客さまだけです。それ以外の人は参加できません。これもすべてお客さまが喜ばれるということだけでやっています。これで8回目になりますが、損得で言えば、完全に損です。でも、お客さまどうしの紹介も一生懸命やるのです。だから、お客さまが結果として紹介してくださるのです。技術は大したことないですが、うちの社員は一生懸命なのです。そのように教育しているものですから。
これはどんな業種でも同じだと思うのです。きょうも、美容業の方が朝礼の見学に埼玉県の鳩ヶ谷というところから来てくれました。全部で120 人くらいいるという美容院で、10何店舗あるといっていました。そこの方が来られて、私もちょっと説明させていただいたのですが、「何のためにあなたたちは働いているのか。あなたたちは美容業で、あなたがこうやることによって、ほかの美容院からうちに移ってきたら、あなたたちはプロとして、本当にお客さまに新しい世界を見せてあげられるんですよ。あなたたちの技術を磨いたり、センスを磨くことによって、お客さまは感動して、ほかの美容院では味わえなかったような感動を覚える。そのためにお店に来てもらわなければいけないんです。お店に来てもらうのは、あなたたちの売上のためではないんです。お客さまのためなんですよ。そのために技術を磨いたり、サービスを磨きましょう」。それがお客さまに来てもらう理由なんです。それが営業です。
皆さまの印刷業だって同じはずです。いかに自分の会社がすばらしくて、社長がすばらしくて、うちのサービスがすばらしいか、ということを社員に一生懸命教えなければいけない。実際に中小企業だから大企業に比べて悪い点というのはみんなわかっている。わかっていても、自分の会社のいいところを探し出して、家族的ならば、そういういい点を探して「だからうちの会社はいいんだよ。そのためにお客さまに一生懸命やって喜ばれよう。感謝されよう」そういうふうに続けないといけないと思うのです。
社員が自分の会社を好きにならないかぎり、お客さまにいいサービスができるとは思えないからです。だから、それを一生懸命やっています。自分たちの商品とかサービスを社員に誇りを持たせなければいけない。
そのための商品のつくり方とか利益の出し方は、後半のほうで説明しますが、そうすると、うちのこの経営計画書は、1表で1年が収まるようにできています。これは、全社員に公開です。私の給料まで入っています。総勘定元帳は社員の休憩室に置いてあります。私が公私混同しないように。社員のなかから監査役も二人選びチェックしてもらっています。
そのチェックしたあと、全員に試算表を渡して、全員が経営計画書に数字を記入するようにしています。そうやってパートの人まで全員で記入します。また、社員一人ひとり全員が目標の数字を持っています。パートの女性まで目標の数字を持っています。
例えば、伝票1枚を打ってもらったら幾らと全部決めてある。試算表も一月分完成したら幾らと決めてある。そして1年間の計画を全員でつくり、毎月第1月曜日に120人全員が一つの会議室に集まって売上を発表して記入する。
そのときに手をこまねいて余っている社員はだれもいないのです。だれが幾らの目標に対して売上がどのくらい上がるか、全員がわかるようにしてある。そうすると、みんな、自分が計画に足りなかったり、チームが目標にいっていないと悔しいですから、チームの社員の質を上げるために勉強会をやったり、いろいろ自分たちで勝手にがんばるのです。ですから、現場の社員が勝手に自分で考えながら動き出しています。
私どもは今、102件の新規開拓があります。私が新規開拓したのは2件だけです。あと100件は全部社員が自分でお客さまに紹介してもらったところです。ですから、みんな一生懸命やっています。
先ほど言ったように、やるのは自分が生きていくためではなく、自分たちの理念のためだと思っている社員が多い。全員がそうだとは思いませんが。全員が計画をつくって、その実績を毎月チェックしている。
人間というのは、脳細胞を活性化するためには、明確な目標と、適度な緊張感と、明るい社風が必要だそうです。佐賀大学の上原教授がいっていました。私はそのとおりだと思うのです。人間というのは、目標を持つと、その目標に対して走り出す性質があるのです。ですから、明確な目標の数字をもってそれをチェックする。リーダーは、毎月社員一人ひとりと面接をやる。その面接が終わったら、私と専務の2人がリーダー10人に対して5人ずつ面接をやる。そうやって常にチェックする体制を敷いています。
全体のなかで各チームのリーダーが発表するなんていうことはしません。なぜかというと、全員が発表しているとき、自分が関係なかったら聞いている社員はだれもいません。全部、チェックはマンツーマン、1対1が原則です。全員がやっていたら、全員が手を動かす。そういう形のなかで計画と実績をチェックしながらやっていると、そんなに毎年計画と実績が狂わないのです。本当です。
利益もどんどん出てきます。私どもこういうことをやって20年近くなりますが、だんだん計画と実績が近づいています。不況になればなるほどうちのお客さまは増えています。会計事務所の税理士先生は、いままでとほとんど変わりないことばかりやっている人が多くいます。「お客さまのため」という発想がないのです。みんな申告とか、自分の発想しかないように思います。
お客さまの持っているイメージは、一般的には「会計事務所は暗い」というイメージでしょう。私どもは、タダでBSテレビのコマーシャルに出たんです。これはお客さまの紹介です。「放送枠があいてしまったから、だれかいませんか」とお客さまから電話がかかってきたから、「じゃ、うちが出ます」ということで9回放送された。
そして ディレクターの方が来て何と言ったか。「会計事務所がこんなに明るいと思わなかった」とびっくりしていました。みんな「暗い」というイメージばかりなのです。
例えば、全員立って挨拶するのは当たり前ですが、雨のなかお客さまが来られたら、うちの受付の社員は、その傘をタオルできれいに拭いて、後ろで陰干ししています。そして帰られるときには、長い傘はきれいに畳んでお返しするし、折り畳み式の傘は受付に置いています。そうすると、お客さまが帰られるとき、折り畳み式の傘、「どこ?」というから、「こちらにあります」といってお渡しする。
帰られるとき玄関まで送ります。そのとき私が、「傘、気がつきませんでした? 折り畳んであるでしょう」という。そうすると、びっくりされる。要するに気がつかない人はずっと気がつかないものですから、教えてあげないといけないのです(笑)。気がつく人は「へえー」と気がつく。「すごいサービスですね」という。そういうふうにして、会社のなかでそういう仕組みをつくっているんです。
|