5.日本VS「欧州〜世界」のラベル市場 (画像をクリックしてPDFを表示します) |
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最後に日本と欧州〜世界のラベル市場の動向などを比較しながら、今後の展望までを見ていきたいと思います。 |
<世界のラベル市場動向>
世界的なラベル市場はどのように動いているかということですが、粘着ラベルがラベル業界では一番メーンの市場になっています。ラベルには、先ほども言いましたように、グルー、シュリンク、インモールド、ラップラウンド、ガムなどいろいろありますが、粘着ラベルの市場は依然60〜70%弱ぐらいのシェアとなっています。
その粘着ラベルの製造だけではもうやっていけないということを欧州、北米では言っています。そこで、シュリンクラベル等を取り込むためのナローウェブコンバーティングマ |
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シンを導入していこうという動きが顕著になっています。
グルーラベル(糊引きラベル)は、市場が減ったとはいえ、まだ依然としてワインラベルなどではかなり使われております。同ラベルについては、オフセット印刷機で展開しようという動きがあるほか、パッケージ分野(軟包材)は、UVフレキソ等で薄いフィルム素材への印刷を取り込んでいこうという動きがあります。そしてUVフレキソとデジタルでは、シュリンク/ラップラウンドスリーブの展開ができますので、その分野で小ロット対応のものはデジタルでもやっているようです。
そして最終的には、RFIDラベルについては、現状のラベル印刷機にユニットを搭載するのか、もしくは専用機を買うのかいろんな選択肢がありますが、最終的には取り込み利益率を上げていこうといった動きが全体の流れとなっています。 |
<欧州のラベル市場動向>
世界から欧州に目を転じてみますと、欧州のラベル市場の動向は、今回の視察のほか、前回もオランダとベルギーの会社を視察しており、その中から見てみますと、粘着ラベルは日本と比較にならないほどの量が市場としてあるということを、スーパーマーケットや何カ所か回った店舗の状況などから実感することができました。
日本ではヘアケア製品や、ビンなどはグルーラベル、もしくはインモールドのラベルがメーンになっていて粘着はほとんど使われていませんが、ドイツのスーパーマーケット |
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を見ますと、全体の8割以上は粘着ラベルなのではないかという状況でして、写真は、高級スーパーだったのですが、製品自体も、同じチーズならチーズ製品で20種類くらい並んでいたり、ジャムならジャムで30種類くらい並んでいたりと、完全に日本の市場とは商品の品揃えが異なり、同じ品種で違う種類のラベルがずらっと並んでいるわけです。
「多品種小ロット」と日本でも言いますが、その多品種小ロットのボリュームが完全に違う。ロットも品種の数も全く異なるということです。それは視察企業のロールの厚さを見れば歴然としていて、日本の先進的なラベル印刷会社ですと、3000枚、5,000 枚というラベルを小巻にして、衛生面や品質の安定性を考えてシュリンクラップし、バーコードで管理ラベルをつけて納品するといったような状況ですが、欧州のラベル印刷会社になりますと、これくらいの大きな1ロールをこのテーブルくらいのコンテナに入れて何ロールも積み込んで、それで発注があるとコンテナごとに納品するということで、同じラベル市場、業界とはいっても日本と欧州では全く市場性が違うということを実感することができました。
いろんなキーワードがあると思うのですが、「生産の効率化」。これについては1台の印刷機に1人のオペレーターが完全に当たり前になっていて、日本も最近はそのような傾向にはあるのですが、スキルレスで、なるべく技術を必要としないような生産システムを構築し、1人で責任持ってその印刷機を動かすことが常識となってきています。
「多品種対応」は、先ほど説明したように、同じ品種でも何十種類も種類がありますので、そういったものについて対応していく。
「大ロット化」というのは、多品種少量のものを積み上げて大ロットにしていく。
「付加価値の追求」というのは、ワインラベル、酒関係のラベルなど 特に装飾性が欧州市場では要求されますので、粘着紙に4色で印刷したというものではなく、ニス引き、箔押し、ホットスタンビングなど、いろんな加工をしながら対応していくという傾向を強く見受けることができました。 |
<欧州の粘着ラベルのトレンド>
これはイギリスのスーパーマーケットですが、こういったヘアケア製品、同じような製品を、日本でも日本語で書かれたものが販売されていると思うのですが、これは日本市場だと全部インモールドで製造されています。しかし
これは裏も表も粘着ラベルでした。パッケージの色が赤や黄色であるので、ラベル自体は透明ラベルを使用しています。透明の粘着ラベルを貼って、ラベルがまるで存在しないかのような「ノーラベルルック」とよく言われていますが、そういう演出をしている状況です。
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あと欧州でよく見かけるビンなどは、ほとんどこのスタイルなので、日本の輸入スーパーなどではよく見かけるのですが、ふたのところに丸いラベルが貼ってあり、そこから胴体部までをつなげ、一体化したラベルが多いですね。すべて粘着ラベルで、開封防止の役割も果たしています。このようなラベルコンバーティングをする時の製造にまたノウハウがあるわけですが、抜きをかける時に、きれいにするっと抜けるように、ラベルデザインを互い違いにしてコンバーティングをするなど、各印印刷会社ごとに技術開発が重ねられているということを見受けることができました。 |
<日本と欧州の異なる市場性>
これは先ほどお話したことなのですが、同じ項目別に比較すると、日本は平圧/間欠凸版が中心ですが、欧州はUVフレキソ/オフセットコンビネーションが中心。ロットは、日本は5,000 〜1万、1ジョブが中心なのに対して、これは10万枚と書いておりますが、1つのジョブといっても個別に出てないのでちょっと比較の違いがあると思いますが、1つのオーダーに対して10万枚が1回の発注が出るということです。
粘着市場は、日本は今シュリンクですとかインモールドラ
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ベルとの激しいせめぎ合いといった状況ですが、欧州では依然メーン市場で粘着ラベルが多く使われている。特にロットの多いワインラベルなどではグルーから粘着への移行が進んでいますので、ここら辺はまだまだ余裕のあるところといった違いがあります。 |
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6.ラベル市場の展望 (画像をクリックしてPDFを表示します) |
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最後に日本の展望について少しまとめたいと思います。 |
<日本のラベル市場>
まず日本のラベル市場についてなのですが、ラベルの形態別に見たトレンドを少しまとめてみました。可変情報ラベルに関しては、製造形態は一層複雑になっていくのではないでしょうか。
@ラベル印刷会社で可変情報までを一貫して印刷。
印刷を行ってそのままインラインで可変情報を打っていく、もしくは印刷をしてからオフラインで可変情報プリンターに載せて印刷をするといった手法。
Aラベル印刷会社でデザイン部分などの前印刷を行っ
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たのち、各ユーザーがプリンターで可変情報を出力する。
Bをラベル印刷会社が抜き加工したブランクラベル(何も印刷してない抜きだけが行われているラベル)を供給して各ユーザーがそれぞれのプリンターで出力する。
可変情報ラベルの中ではこの3つが形態としてあるわけです。現状ではAが多分多いと思いますが、@も最近のインクジェットユニットの台頭で行われるようになってきました。また、ブランクラベルもかなり多くなっておりまして、社内の内製化、在庫を置きたくないとか、そんなに多くのラベルは要らない、といったところでコスト計算をすると、プリンターで出力してしまったほうがいいということで、熱転プリンターなどを導入してカラー印刷まで可変情報で打つといったユーザーが増えてきています。
次に偽造防止、セキュリティー改ざん防止ラベル、高付加価値といった分野のラベルになるのですが、こういった部分はラベル業界がこれから取り込んでいかないと展望が見受けられない部分です。受注価格が厳しく利益率は下がる一方というような状況になるのではないかと思います。特に最近、食品分野の偽装表示問題はかなり重要になっていますが、ラベルの貼り替えなどといったような話題もあります。こういう偽造防止、セキュリティー、改ざん防止、このラベルが貼付されたものは絶対に品質、製造日が間違っていませんよ、といったラベルを好むユーザーが増えているといった情報も入っておりますので、このようなラベルのニーズは来年以降より進むのではないかというような展望があります。
その反面、市況トレンドとしてはマイナス要因として、原紙メーカーは一斉に本年12月から粘着紙の値上げが始まりました。紙系で10%、フィルム系で20%くらいが平均値となっていまして、ラベルが値上がりするとは思ってないユーザーが多いとされる中で、原紙が上がるとラベル印刷会社の利益率は圧縮されてしまうわけです。なかなかラベルの値段のアップは難しい。だがやらなければいけないということで、印刷会社にとっては、見きわめの時期を誤ると大変なことになるといったような声が多く上がっており、これは来年以降の大きな課題になってくるのではないかと予測しています。
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<世界のラベル市場>
世界のラベル市場の展望を見ますと、欧州では多品種小ロット化。多品種小ロットといっても日本市場の数十倍レベルです。
北米は、今回の話の中ではあまり出てきませんでしたが、UVフレキソではなく水性フレキソがメーンの市場で、本当に印刷品質のレベルで見ると疑問点がよく出るようなのですが、スキルレスと大量生産というところが市場のトレンドになっています。そういったところを取り込みつつ、やはりデジタル印刷などアメリカ市場ではスキルレス化
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が顕著になっていると思います。あと、インクジェットのシステムのメーカーも多く存在しますので、こういったところの先行した取り組みはますます増えていくようです。
アジア市場につきましては、まず中国市場ですが、ちょうど今週末からラベルエキスポアジアが開催されますが、UVフレキソ、高価格帯印刷機の導入は大手企業ではかなり増加していますが、現在は、ひと段落といったところです。
インド市場は、欧州、特に西欧のラベル印刷会社との団体間のコラボレーションが進んでいまして、団体でインドに行き、インドのラベル印刷会社と交流をし、パートナー企業を模索するという取り組みも行われており、ラベルの低コスト化に対応したインド市場は今かなり顕著な伸びを見せています。
タイ・ベトナムももちろん伸びていまして、最近、国際企業・グローバル企業のブランドオーナーの進出がかなり増えております。それに付随してグローバル展開するラベル印刷会社のトップ企業もブランドオーナーの工場の近くにラベル印刷工場を建てて一貫して供給する。そういった意味でタイ・ベトナムが伸びています。 |
<ワールドワイドで、今ラベル業界に求められているもの> |
世界全体のラベル業界に求められるものは、短納期。これはますますユーザーニーズが高くなっている。即納ですとか、1日、2日といったようなこれまでデジタル印刷でしか対応できなかったようなものが従来印刷にも求められている。
生産性の追求はラベル単価の転嫁が難しいという市場に対して企業として考えていかなければいけない重点課題です。
ラベル品種の動向としては、付加価値と高品質化。これはもちろんですが、こういったラベルをブランドオーナーと
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ともに築いていけば、その後リピートが増えていくといったことで、目指すところはそこ、という状況となっています。
この業界において企業発展のためには、印刷だけを行うのではなくて、後加工、いろんな高付加価値印刷などのコンバーティング、抜き加工などそういった部分をより強化し充実させていく必要があります。
さらに ナローウェブで粘着ラベルだけをやるのではなく、ミッドウェブまで取り込んで、軟包装、紙器、パッケージまで行っていく、といったところが課題になります。現在、ラベル業界にも課題が山積しており、これをクリアしていくのには、世界の市場とはまた目的も違うと思うのですが、欧州、北米の動向やトレンドなどを参考にしながら、日本市場の状況に合ったラベル製造スタイルの見極めが今後は重要になっていくのではないかと思います。 |
<PR:2008年ラベル新聞社主催イベント>
最後に宣伝になりますが、当社が来年予定しておりますイベントとしまして「drupa08」と「ラベルエキスポアメリカ08」の視察ツアーを予定しております。あと、先ほども申しましたが、ラベルサミットの後に続くコンファレンス&展示会として、業界最大のワールドワイドのコンファレンス「ラベルフォーラムジャパン08」を10月に予定おります。ご興味のある方は社までご連絡いただければと思います。
本日はどうもご清聴ありがとうございました。
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7.質疑応答 |
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司会 鈴木様、どうもご講演ありがとうございました。
ラベル業界、フォーム業界両方に共通する問題も数多くあって、非常に参考になるご講義だと思いました。
私のほうから1点質問をよろしいでしょうか。欧米ではフレキソ印刷の割合が非常に高いということですが、今言われたデジタル印刷をですとか、インクジェットを使ったものとの製品でのすみ分けというか、そういうものはどのようになっているのでしょうか。ラベルに限らずということでお聞きしたいのですが。
鈴木 デジタルとUVフレキソだと完全にロットが違うと思います。生産のロットに応じてデジタルでやるか、UVフレキソなどアナログ機でやるか、欧州では分岐点がはっきり出ていますので、基準値を超えるものは、従来のコンベンショナルな印刷機で、それを超えないものはデジタルでというようになっています。また、ロットがあえば、技術的にコンベンショナルでやると大変かなと思われるフレキソに仕事を流すというような状況もあると聞いています。
司会 どうもありがとうございました。 |
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8.セミナーを終えて |
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今回の技術セミナーは業界の枠を越えて、ラベル業界最大規模の展示会であるラベルエキスポを中心に、国内外のラベル産業の取り組みについて講演を行なった。
同セミナーのアンケート調査からは、セミナー内容について非常に興味を持たれた方々がいらっしゃる一方、あまり関心を示されなかった方も見うけられ、会員各社の事情を反映しているように思います。
今後 技術委員会ではビジネスフォーム業界の情報はもとより、周辺業界の情報を含めた内容をテーマとした技術セミナーを開催し、各社の変革の取り組みにたいして役立つことを願っています。 |
技術委員会 |
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