銀行員は、一番下の「都市銀行の融資のポイント」というところがありますように、「二期連続で税引後損失となっているか」。なっていたら、格付けが8になるのです。そして「実態純資産が債務超過でないか」。土地、建物の評価損、その場合も格付けが入る。「帳簿上、債務超過でないか」。これは帳面上です。「返済条件の変更をしていないか」。これはリ・スケジュールです。今はリ・スケジュールをやっても融資すると国はいっています。
「役員借入金は資本金として扱う」「債務償還年数が10年以下か」。こういう計算式で当 |
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資料 財務格付けワークシート (画像をクリックして拡大) |
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はめて、10年以下だったら融資します、10年超えていると融資しませんという基準だというのです。
うちは、その話を聞いて「財務格付けワークシート」の形にしてしまったのです。そして銀行は格付けしますが、格付けの数字は7までしか入っていません。なぜかというと、8以下は銀行が判断するからです。これは8になると、引当率が普通は2%なのに、20%にしなければいけないのです。そうすると、銀行の自己資本が下がるでしょう。下がるから早く回収に入るわけです。 |
格付け8にされたら、銀行が困るけれども、困らないようにするために回収に入るから、企業はもっと困る。だから融資を受けられなくなる。各付け9になると、引当率80
%、各付け10になると100 %見込まなければいけないのです。
私どもの格付けのシートは、最後に7までしかないのです。なぜなら、25点未満でも7なのです。たとえ10でも7になる可能性もある。そのかわり、20いくつでも、この条件を満たせば8になってしまうということです。だから、銀行がどういうふうに我々を格付けしているかと |
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資料 格付スコアリング・シート (画像をクリックして拡大) |
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いうことを考えながら決算書をつくることも大事だということなのです。
今私が言ったことが言葉になっているのが、この「汚い字シリーズ」のところに書いてあることです。そこを読んでいただければ、2枚目「格付スコアリング・シート」に書いてあることの意味づけがわかります。 |
その次の3枚目の「未来会計図表」が、今、説明したところです。こういうふうに図で描いてみると、はっきりわかります。
例えば、この会社は、今、12月ですが、1億6,300万円の売上で、実はG(経常損益)、約400万円利益を出したわけです。でも、あと400万円の利益、この利益を倍にするためにはあと売上がどのくらい必要だったと思いますか。
計算できるようになっているのです。今、Gが390万円とあります。これは次のページの12月から持ってきた数字です。389万円の利益だから390万円。 |
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資料 未来会計図表 (画像をクリックして拡大) |
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それで売上高が1億6,300万円。私たちはお客さまと一緒に利益の図を完成させるのです。だから、わざと空欄にしてあります。コンピューターでなく、手で書かないと覚えないものですから。
皆さま、400万円の利益をあげるのです。固定費は変わりますか。変わりませんね。そうすると、あと、粗利益の6,520万円に400万円粗利を加えればいいのです。400万円粗利を増やすためにはいくら売上が必要でしょうか。1,000万円です。1,000万円あと売上を増やせば、利益が倍になるのです。 |
1億6,300万円の売上をあげて390万円の利益。だから、そのくらい会社というのは目標を明確にして、これだけ売上を上げるということに対して、ここにチェックしながらやってみんなで工夫していけば、利益なんてがらっと変わってくる可能性があるのです。私たちはそれを一生懸命やっているのです。
去年より利益は30%くらいアップなんです。売上は10%アップですが。そうやって常に数字を見ながら計画を立て、それをチェックしていく。
この会社だって、19億6,000万円で、43.4%で、今、1億5,400万円。あと、1億円増えたらどうなりますかといったら、粗利益率は43.4%ですから、粗利は4,340万円増えるね、と。そうすると、利益は4,340万円足すと約4,400万円ですから、約2億円になりますねという計算です。「社長、2億円つくれるじゃないですか」と。何回商売で負けていましたか。負けなかったら絶対儲かりましたということです。
数字を活用して利益を出す。それが月次決算書の目的です。そのためにいろいろなことをやっている。社員教育は社員に幸せになってもらうために、人間性を高める教育をしている。数字を出して計画を立てて、それを実践していく。中小企業の経営はそういうことの繰り返しだと思うのです。
私は、中小企業だからこそ社員を幸せにできるのではないかなと思っています。たぶん皆さん、坂本先生のお話を聞いて、1番目は社員と家族、2番目は仕入れ先の社員と家族、3番目は得意先の社員と家族、4番目は地域社会、5番目が株主といっていました。株主はどうでもいい、と。だからこそ、中小企業は社員を幸せにできるのではないか。大企業はみんな株主をみなければいけない。今、株主総会ばかりですが。だからこそ夢のある企業をつくれるのではないか。
大きな企業ではできないことが、我々中小企業だからこそできる。本当にみんなが、働いてよかったな、楽しい、と思えるのです。うちに大企業の京セラや日立から入ってきた社員がいます。日曜日の6時半になると憂鬱になっていたそうです。「サザエさん」を見終わると、競争が厳しくて憂鬱になるそうです。
うちの会社に入ってきた社員は、こんなことを言っていました。本当に優秀な先輩がいて、尊敬していた。その先輩がノルマ、ノルマできつかったので数字をごまかしたらしい。そして処分を受けてしまった。それで自殺してしまったらしい。でも、会社は何事もなかったように次の日も動いているのだそうです。それを見て「自分はいやになった」と。それでやめた。それでこういう会計の仕事がしたいということで来た優秀人材です。先ほどのDVDをつくったのは彼です。
うちにもう一人おもしろい社員がいます。グランツサトコさんという女性です。45歳で3年前に入社が決まった。やっと今年の6月から働いています。家族を全部置き去りにして、オーストリアからうちに来たのです。25歳で結婚して、オーストリアに行って、20年後に自分だけ日本に戻ってきて今、仕事しています。なぜ戻ってきたか。「オーストリアにいたら、日本が心配になった」というのです。「あまりにも自分中心のおかしい国になってきた。だからこれからの20年間、自分はどうしても日本に貢献したい」と考えている。一生懸命子どもと旦那と、旦那の両親を説得して来たそうです。
私はすごいプレッシャーでした。うちの会社は3年前はひどい会社だったのです。それから一生懸命になって今の会社を少しずつ良くしてきました。
彼女は、なぜうちの事務所を選んできてくれたか。「いろいろな企業、コンサルタント会計事務所を見たけれども、ホームページに書いてある志が一番高かった」というのです。「日本の中小企業を元気にするためにがんばる。自分のことよりも社会の役に立ちたい」。
「日本を美しくする会」に入ってトイレ掃除をやっていますし、会社の中でも掃除したり、一応まだまだ建前ですが、世の中に役に立つことを一生懸命やろうと思ってがんばっているのです。それで入ってきてくれました。そういう人も世の中にいるのです。ですから、彼女をがっかりさせない会社になろうと思います。やがて旦那も数年後に定年で来るのです。そのとき子どもも来るかもしれないので、がんばらなければと思いながらいつもやっています。
ですから、まだまだできなくても、志だけは高く持って、中小企業であることを誇りに思って、本当にそういう経営をしたいなと思っています。見るのは、社員だけ見ればいいのです。株主を見る必要ないのです。
もっといろいろなことがあります。私が一番得意なのは数字なので本当はもっと数字の話をしたかったのですが、勝手な話しをしながら時間がたってしまいました。では、ここで終わりに致したいと思います。
どうもありがとうございました。
講演会で放映された「古田土会計事務所紹介のDVD」及び「経営計画書」入手についての問い合せは、日本フォーム印刷工業連合会事務局までご連絡下さい。
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