くらしと印刷 「木目印刷と立体印刷」
「木目印刷と立体印刷」
1. B子さんのメモ
「後片付けする間にこれ見ておいて」と渡されたメモには、小さな字でぎっしりと次のような文字が記されていました。
- 化粧パネル、化粧シート、壁紙、家具木目
- DM、カタログ、パンフ、チラシ
- 文字、書体
- カレンダー
- ティッシュ箱
- ラーメン袋、スナック菓子袋、チューインガム包装
- 菓子箱(箱の形態、機能。お菓子にも直接印刷)
- 薬品(包装、錠剤に印刷)
- 化粧品容器、箱
- 牛乳 ジュース、水の紙容器、酒パック(お爛できる酒容器)
- ふりかけ袋
- プリン、ヨーグルトなどのデザート容器、蓋
- 葉書、切手(シークレット葉書)
- 銀行通帳
- 宝くじ
- 洗剤箱、濃縮洗剤ボトル
2. 内装には木目印刷
一般的には合板や金属板に直接印刷したり、プラスチックフィルムに印刷し、これを貼り合わせる方法が主流となっていますが、最近では、天然材のような表面の感じを出すために、凹凸まで再現して木目や木肌と同じような色、模様のある印刷を行う「立体模造技術」(エンボス加工)も多く使われるようになってきました。
そういえば、木目印刷が高級感を出すために活用されている例に自動車の内装があります。高級車には一部本当の天然木を使用してあるものもあるにはありますが、最近の自動車部品の物性規格は非常に厳しくなっていて、天然木だけで規格をクリアーすることは経年劣化などから困難なために、金属板と貼り合わせるなどの方法をとることがほとんど。
そんなこともあって、高級車に実際に使われている木目模様のダッシュボードや内張りは印刷によるものが多く、プラスチック成型したものに曲面印刷(絵付け)を施したり、木目を印刷したシートと成型したプラスチックを精巧に貼り合わせたものが利用されています。
車の中を部屋と考えれば、壁や家具と同じような感覚で高級感を与えているのかもしれません。
3. 立体印刷あれこれ
<この立体印刷には、油絵などのタッチや絵の具の盛り上がりを忠実に再現した高級複製絵画もあるな。イベントで実物と複製絵画を並べてどちらが本物かを多くの人に判断してもらったら、約半数の人が複製絵画を実物と思ったということを聞いたことがある‥‥‥>
そしてA君は立体印刷という言葉から、子供のころ、赤と青の2色の絵柄を少しずらして印刷したものを、左右に赤と青別々の色が付いたメガネをかけて見ると、浮き上がって立体的に見えるものが雑誌の付録などによくついていたことを思い出しました。
最近は本格的な「立体印刷」として、絵葉書やグリーティング・カード、パッケージなどもよく見かけます。多くは、少し厚みがあって表面に細かい凹凸のあるタイプのもの。
このタイプは、レンチキュラーレンズという幅が1mm以下のカマボコ型プラスチックレンズを印刷物に貼り、特別なメガネなどを使わなくても左右の目が別々の像を見ることができるようにしたものです。
もちろんこのための印刷物は右目用、左目用の像をレンチキュラーレンズに合わせて交互に正確な印刷をしておく必要があります。
4. 不正防止用ホログラム印刷
<とくに普通の白色光で見ても立体再生ができるホログラムが開発されて、印刷にも利用されるようになってきたんだった。ホログラムの利用は偽造しにくいという特徴からセキュリティが求められる印刷物に多いけど、それ以外にもポスターやシール、POP広告などのさまざまな分野に応用されてきている。あのキラキラした立体感は、見ているとなんだか鏡の世界に入り込んだみたいで不思議な感じがするからな‥‥‥>
などと、メモを見ながら考えていると洗いものを終えたB子さんが、
「どう? たくさんあるでしょ」
と手を拭きながら座ります。
「いっぱい見つけたね。僕もかなりメモしたからダブッているのもあるけど‥‥‥。でも他にも印刷に関連したものはあるかもしれないな。お昼に君も知っている0さんに話したら、0さんの先輩で印刷技術に詳しいKさんに教えてもらったらどうかというんだ。紹介してあげると言われたから、ぜひお願いしますと頼んだら早速Kさんに話してくれて、お宅に伺うことになったよ」
「Kさんってあの有名なKさん? すごいじゃない。0さんに感謝しなくちゃね。何がきっかけだか知らないけど、あなたも勉強家に大変身で気味が悪いくらいだわ」
「印刷技術者としてみっともないことのない程度の知識を身につけようと思っただけだよ。さあ、寝るか」
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本章は1997年に発刊された「ぷりんとぴあ: ちらし広告と印刷」を修正・加筆したものです。
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