6.環境に貢献する紙
森林保護のために開発された製品が使われています
印刷に使われる紙が、適正に植林管理された森林から伐採された木材でつくられたものであれば、また、きちんとしたリサイクル活動によって、紙が持続的に提供されているのなら、印刷物は電子メディアをはるかに上回る環境貢献度をもっています。森林資源を無計画に伐採することもなく、むしろ森林の循環育成を通じてCO2の吸収と酸素の生成に寄与することができるからです。また、資源(古紙)の回収、廃棄物の再利用という点からも、地球温暖化防止に大きく貢献しているのです。プラスチック類とは違って、それ自体が再生可能な生分解性の素材だという利点を活かした環境対応型の紙が、次々と登場しています。代表的なものを以下にご紹介しておきましょう。
(1)再生紙
森林資源の保護や廃棄物の削減という観点から、古紙を一定の範囲(理論的には1%以上)で配合した「再生紙」が普及するようになりました。出版物や商業用印刷物など使用済みの紙を、もう一度、印刷用紙をつくるための製紙原料として回収する「紙から紙へのリサイクル」運動が展開されています。古紙が多く含まれるほど、繊維の長さが短くなって紙の強度が落ちたり、印刷された古紙が混ざるので白色度が損なわれたりします。こうした品質劣化を防ぐため、紙力増強剤を投入する必要があり、また薬剤で漂白処理を施さなければならないために、かえって環境負荷の原因となっていました。弱くなれば、それだけ厚い紙をつくらなければならず、資源が余計に使われるという悪循環になります。製造過程で排出するCO2の量も大幅に増えてきます。
ひと昔前まで、再生紙というと古紙配合率100%でなければという意識が強かったのですが、最近では、印刷物の用途に応じて、もっとも適正な配合率(15~70%が一般的)をもった多様な再生紙が提供されるようになっています。100%に拘る理由はなくなり、環境に悪影響を与えかねない“完全な”再生紙は次第につくられなくなったのです。
(2)森林認証紙
森林を計画的な植林管理によって育てていけば、森林は乱獲されることなく、木材チップ資源を持続可能な形で供給することができます。このように適正に管理された森林から調達されていることを第三者によって認証された木材チップを用いた紙のことを、とくに「森林認証紙」と呼んでいます。
(3)非木材紙
森林保護に別の角度から貢献する方策として、木材以外の代替資源を用いてつくっている紙を「非木材紙」といいます。非木材とはケナフ、バガス、竹、麻などの素材を指し、これらのいずれかを一定割合以上含んでいるものを「非木材紙」と認定しています。木材以外の繊維が使われるため、さまざまな表現をもった個性的な紙となるのが特徴です。
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