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技術セミナー |
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「フォーム業界から見たdrupa2008」 リポート
2.「インクジェット技術」 |
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共同印刷株式会社 粥川 哲 氏 |
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共同印刷株式会社、BF証券製品開発部の粥川と申します。
私は主にビジネスフォーム関連の開発に携わっております。今回のdrupa では、各方面で色々な専門の方が報告されていると思いますので、私の方からはdrupa の感想及びその辺の感じた事を中心にお話し出来たらと思っております。
今回、私はdrupa に初めて行ったのですが、会場が広かった事、人が多かった事が非常に印象的でした。
この種の日本でのものと言いますと、IGAS、JGASと言ったものがあるかと思います。ここ数回、非常に人数が少なくなってきて寂しくなってきているなというイメージがありましたが、 |
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drupa の方ではそう言うことは無く、非常に活気の溢れた会場の様に感じました。
今回は、フォーム工連さんの方からは「フォーム業界から見たdrupa 」と言う事で、特に今回の目玉でもあります「インクジェット技術」についての報告をして欲しいという事でした。私の方も、その分野に関しては非常に興味を持っている分野でありましたので、フォーム業界では一番関係の強いロール to ロールのカラープリンタについて素直に感じてきた事、見てきた事を報告させていただきたいと思います。 簡単な資料でありますが、まとめてありますので、これを参考にしていただきたいと思います。 |
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<drupa 2008で紹介されたインクジェットプリンタ>
まず、コダックさんの初のDOD(ドロップ・オン・デマンド)のインクジェットプリンタのVL2000です。このプリンタは、Versamark の後継機として位置付けられておりまして、ブースでは銀行の明細書の印字を行っておりました。
先般、コダック主催でdrupa の報告会がありましたが、そこでは従来のVersamark のようなコンティニュアスタイプのインクジェットでは、染料タイプのインキを使用しているためベタ濃度が上がらないという事なので、今回の顔料タイプのDODのプリンタを出したと言っておりました。より濃度を上げて、より |
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オフセットに近いタイプのプリンタで印字をすることを目指していると言う事だと思います。現在、このプリンタのスピードは、 75m/分。近々には150 m/分になるそうです。 |
次に、スクリーンさんのTruepress Jet520です。これは、私共が訪問させていただいた時は、当日の朝日新聞のものを印字しておりました。後ろの方には、フンケラーの加工機が付いておりまして、プリントから加工まで一貫して作れると言った様なものが作られておりました。
今回、各プリンタメーカーさんは、ただ単に印字しているという訳では無く、後ろの方に色々な加工機を付けまして、様々な加工が出来ると言う展示の仕方を行っているメーカーさんが目立っておりました。 |
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次は、インフォプリントさんのInfoPrint 5000です。これは、リコーさんとIBMの共同出資会社です。プリンタとしては、スクリーンさんのTruepress Jet 520 とまったく同じものです。違いとしては、解像度とスピードがまだ128 m対応にはなっていないという事です。こちらはIBMさんが推奨しておりますAFPの対応モデルとなっております。
また、スクリーンさんの場合はCMYK、各ジョブごとのRIPを行っていると言うのに対しまして、インフォプリントさんの方は1ページ、2ページ、3ページと、RIPが終わった単位で次のページに行くという形で、RIPの効率を上げていると言うタイプのプリンタになっております。 |
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次は、ミヤコシさんのインクジェットプリンタ(ミヤコシ MJP20V)です。こちらは、今回UVのインクジェットプリンタのみでした。ブースの方は殆んど日本人だったと云う事もあったのかも知れませんが、さほど賑わっているという感じも無く、閑散としていましたが、いざプリンタが回りだしますと周りから人が寄ってきまして、このプリンタに対して非常に関心があるんだなというイメージでした。
このプリンタは、インキの特性上、各ユニット毎にUVの乾燥機が付いている為、他のプリンタと違って、全長の長さが非常に長くなってしまっています。
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また、Truepress Jet の場合はCMYKを同時に印字するという形になっていますので、見当を合わせることは特に気にしなくてもいいのですが、このプリンタですと、自動ではあると思いますが、各部署ごとに見当を合わせなければいけないという形になっております。 |
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次に、OceさんのJetStream2200 / 1100です。こちらは、今回のdrupaの方ではミヤコシさんは展示されなかったのですが、ミヤコシさんのMJP600 と内容は同じものです。違いとしては、こちらの方もデータ形式としてAFPでの開発を行っているという事です。
オセさんは、ヨーロッパの地元のメーカーと言う事もありまして非常に広いスペースを持っていたのですが、かなり注目度が高く、会場の中も非常に混み合っておりました。このプリンタも非常に人を集めて関心度の高いプリンタであると感じました。
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<drupa 2008で参考出展された
インクジェットプリンタ>
今回のdrupa では、各インクジェットメーカーさんが今後の開発の方向性や技術のアピールを非常に競っているようなコンセプト的要素のあるプリンタを数多く出しておりました。まずその中でコダックさんのStream Concept Pressは、私どもが行く前から新しいStreamの技術が色々な方面で宣伝されていたのですが、非常に高品質で、より高速にというコンセプトで、オフセットに近い印刷物を目指したプリンタだそうです。
この辺は、聞くところによりますと、Versamark の場合は、ヘ
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ッドから射出されたインキに電荷をかけて回収を行っているのですが、電荷をかけて回収するという事は、インキ自体にある程度細工をしなければいけない。ですから、このStream技術では、ヘッドから射出されたインキ滴サイズを、インキのサイズを大きいものと小さい物に分けて、小さい物を回収する。横から風を当てて風力によってインキを回収するという形を取っているようです。
先ほどお話ししたとおりに、インキに細工をしなくてもいいという事なので、濃度が上げやすいと言った顔料タイプのインキをこのコンティニュアスタイプのインクジェットのヘッドの中で使う事が出来るそうです。 話を聞いたところ、このプリンタも、性能からしますと、インキの制御とかサイズの制御、風の制御、印字する為のインキの風の影響等を考えますと非常に難しい技術ではないかという事で半信半疑の部分もありましたが、実際、墨の印字だけだったのですが、ミューラ・マルティニの印刷機の上に墨のヘッドを付けて300 m/分で実際回しておりました。こちらの方はサンプルも配ってありましたが、非常に早いスピードで品質的にもいいものかなと思っております。 カラーの場合は200 m/分のスピードになるそうですが、こちらの方はサンプルの提示だけでした。
見たところ、オフセットの印刷というところまではいかないのですが、かなりの品質の物であるかなと感じております。この品質で200 m/分のスピードが出来ると言う事は、我々フォーム業界にとっても非常に期待できるものではないかと思っております。 それから、コンティニュアス方式のインクジェットにコダックさんが何故こだわるかと言うと、常時インキを噴き出して回収しているという事で、DODの機械に比べて非常にスピードが出し易い、高速で印字が出来ると言う事で、非常にコンティニュアスタイプのものに力を入れているという事です。
ヘッドは、メンテナンスフリーで、今後のこのプリンタの運用コストとしては、現状のVersamark と同じだけのランニングコストを目指していると言う事でした。 |
次に、会場の中でも一際、目立っていたのが、HPさんのInkjet Web Pressでした。こちらのコンセプトは、インクジェットの技術は大型輪転機にも代用できるのではないかと言う事を非常に大きくアピールしているような気がしました。 このプリンタの方は、HPさんのIndigo同様に、用紙を選ぶ事の無いように、カタログの方には「ボンディングエージェント」とは書いてあったのですが、これを施してありまして4色印字を行うという形になっています。
drupa に行く前は、いろいろ調べてみたのですが、最大用紙幅が30インチと書いてあったのですが、現場の印刷機のほう
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では36インチと説明がありました。ちょっと私もわからなかったのですが、展示品に関しては36インチという事だったそうです。
このプリンタは非常に安く印字が出来ると言う事を売りにしているらしくて、A4片面で1セントと言っておりました。ユーロが160 〜170 円くらいでしたので、日本円にすると、A4片面約1.6 円か1.7 円くらい。そういう単価で印字することを目標にしているそうです。
このプリンタについては賛否両論あると思うのですが、私の方は、インクジェットプリンタの可能性とか、企業としての非常に強い意気込みなどが感じられたプリンタだったと思います。 |
次に、我々フォーム業界の方では枚葉印刷機に対してあまり馴染みは無いのですが、今回、スクリーンさんとかフジフィルムさんの方から、枚葉印刷機にも使用出来ると言うコンセプトでPODの一つ上をいく印刷機に近いタイプのプリンタを出しておりました。
まず、スクリーンさんのTruepress Jet SXですが、こちらの方はCMYKすべての色で印字する事も可能ですが、デモでは、事前印刷してある物に可変部分のみの印字を追い刷りするという形で行っておりました。オフセットの品質で、小ロット対応のオフセット印刷機の代替機としての需要を見ている
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ようです。
印刷工程の枚葉機の部分にただ単に当てはめるだけなので、POD機よりは印刷会社にとっては非常に使い勝手のいい機械であると感じました。
また、チラシとか金券類、箔押し、エンボスといった通常ロールでは出来ない様な作業などに対しての印字加工が、バリアブル印字をそれに付加する事も出来る様になった事は非常に大きいのではないかと考えております。 |
次にフジフィルムさんの方も、スクリーンさんと同様に枚葉タイプのプリンタを出しておりました。こちらの方は形からして印刷機に近いようなインクジェット、印刷機にインクジェットのヘッドを乗せたようなプリンタになっております。
残念なんですが、私はデモの時間帯には行けなかったので動いているところは見る事が出来なかったのですが、印字したサンプルが置いてありました。見た目はかなり綺麗に感じました。こちらは、どちらかと言いますと、先ほどのスクリーンさんと比べまして、バリアブルプリントの機械よりはインクジェット印刷機というようなイメージがしました。
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今回は、こうしたコンセプト要素の強いプリンタが数多く出されていました。その辺は直ちに印刷業界に浸透していくとは思えないものもありますが、インクジェットメーカーの今後の将来を睨んだ開発、方向性の広さを表したものではないかと思っております。
各インクジェット技術への意気込みが非常に感じられて、これらは我々フォーム業界にとっても今後新しいプリンタの技術が出てくるのではないかというような期待を抱かせるような製品であったと思います。 |
<インクジェット技術はフォーム業界に
どんなインパクトを与えたか>
では、今回の大命題であります「インクジェット技術はフォーム業界にどんなインパクトを与えたか」と言う事ですが、「主役はPODからバリアブルプリントへ」という事です。
印刷業界におけるカラープリントビジネスの位置付けは、多品種小ロットのPODが今まで主流でしたが、今回のdrupa を受けて、品質的にはPODより落ちますが、ロール to ロール給紙で大量印字、高速処理を行うと言うバリアブルプリントへの注目が非常に高まっており、各メーカーにおいてもその部
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分に非常に力を入れているように感じました。 プリントビジネスという事から考えると、PODよりもバリアブルプリントの方が今後大きく成長していくのではないかという印象を受けました。
更に「バリアブルプリントからフォーム印刷機の代替機へ?」という事で、これらの製品はPODと比べて印刷の機能を重視する、我々フォーム業界は印刷の品質よりも機能を重視するところではないかと思いますので、フォーム業界の分野ではそういうものに対して非常に活用できるのではないか。その辺もあながち否定出来ないと言う感じがしました。
将来的にそういう事があるのではないかという意識はdrupa に行く前は持っていたのですが、drupa に行った後ではかなりそういう事が近くなってきているなという感じが非常にしました。
もしなった場合、まずメリットとしては、印刷の方の色替え、胴交換等が無いので、組み付けも非常に短く済みますし、色調整も必要無いと言う事です。厳密に言うと、事前にやっていく必要性はあると思いますが、色調整の必要もありませんし、オペレーターのスキルによる品質のバラツキも無いので、こう言う事が出来れば、我々フォーム業界にとっては非常にメリットがあるのかなと感じられます。
ただし、課題として私が色々上げましたが、印字の品質、運用コスト、インキの乾燥方式の問題、異機種間のデータの相互利用に関する問題、異機種間の搭載フォントの相違による字形の問題、こういう問題を踏まえて乗り越えなければならない問題が数多くあると思いますが、そのスピードは、今回のdrupa の視察でかなり早くなってきていると感じております。
印刷業界、とりわけビジネスフォーム業界では更に非常に期待されるものであったのではないかと思います。
これらの課題につきましては、この後、行われますパネルディスカッションの方で色々お話し出来たらと思っております。
以上で、2008年drupa のインクジェット技術の報告とさせていただきます。有り難うございました。 |
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