日本フォーム工連・技術委員会セミナー記録

 技術セミナー
デジタル印刷が拓く新たなビジネス
 「印刷業界を取り巻く環境と今後の方向性」

講師 潮 貞 男 氏
富士フィルムグラフィックシステムズ株式会社
デジタルソリューション部部長
 

 富士フィルムグラフィックシステムズ(株)の潮でございます。一度CTPのお話のときにこの機会を設けさせていただきました。今回もこのセミナーに参加させていただきまして大変ありがとうございます。
 きょうは4名です。富士フィルムグループ全体で印刷というものをどう考えていくのか、単純にプレスプリンティングだけではなく、デジタルプリンティングという世界が開けましたという話をもとに、「One to Oneビジネスを実現するための最新のソリューション」ということで、我々自体がいまどんな環境にいるのかというところを私のほうで10分程度お話しし、そのあと、そのマーケットに対してどのようなソリューションを考えていかなければいけないのかというところで富士ゼロックスの方、それからそういうマーケットにおいてどんなツールが用意されているのか、そして最後に、先日ありましたアメリカでの展示会の報告も含めて、4人のほうから少しずつ話させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 

<印刷業界の置かれている状況>
画像をクリックして拡大(PDF)


  まず前置きになりますが、今、我々は印刷業界をどうとらえていくのか。私どもも何度もこの印刷会館に足を運ばせていただいていますが、今、我々がどんな環境にいるかというのは、こんな数字をお見せすることもないと思います。なかなか厳しい。これは、単純にいろいろな印刷物すべてを含んだ出荷統計なのでこんな形になっています。

 

<印刷業界の売上内容の変化>
画像をクリックして拡大(PDF)


 しかしながら、このような結果にはなっていますが、先般、日印産連から2010年の予測も出てきています。それを見てみますと、皆様が中心にやられている商業印刷も含めてトータルでいけばそんなに悲観するものではない。
ただ、デジタル化は非常に進んでいる。出荷量そのものも大きく変化していない。1社当たりの生産性の効率化は非常に進んでいるわけです。同じボリュームで1社の生産性が大きく伸びたということは、競争と競合は避けて通れない。これが現状です。
 私もちょうどこの業界に入って35年になります。大きく変化しました。ご存じのとおり、1990年代に一時「マルチメディア」という言葉が出てきました。それまでは我々は印刷のなかで余計なことを考えなくても済んでいたわけです。
 印刷をやっていることがもうマスメディアの中心にいるのだと考えていました。他人様のメディアなどは考えなくてよかった時代がありました。
 ところが、「高度情報化社会」という言葉が1990年に出てきました。いまやCTP化率は全国で60%を超そうとしています。それほどまでにデジタル化が進んで生産性が上がってきたということは、先ほど申しましたとおり、競合は避けられない。では、そのなかでどうやって生きていくのか。これはフォーム印刷だけの問題ではなくて、いろいろな印刷のなかで考えていかなければいけない。そういう状況になっているかと思います。
 しかしながら、そんなに悲観した状況ではなくて、このなかからどうやって勝ち取っていくのか、何がいるのか、どんな視点を持っていなければいけないのかというのが、一つのサジェスチョンとしてマーケティングの話になると思います。
当然我々だけではなくて、我々がお客様にしているクライアント様そのものも、実は厳しいビジネスの戦線のなかにある。どうやって生き残っていくのか。
 それは、逆にいいますと、印刷物を発注される方なわけです。発注される方は、印刷物を作りたくて作っているわけではなくて、基本的にはモノを売りたいから作っている。 
 我々は安くて早くていいものを作りさえすればいいという話ではない。
 よく我々は「お客様とどうやって連携していくのか」という話をします。それはむしろ印刷物を超えた向う側にあるお客様の目的をどのように共有化するか。要は、コラボレーションとか連携という意味は、印刷物を介してだけの連携ではなくて、お客様の目的を共有することであって、それが極めて大事になってまいります。
 
<デジタル印刷の出荷金額>
画像をクリックして拡大(PDF)


 そして時代は、デジタルの波がここまで来て、デジタル印刷の量はこのようになっています。
 アメリカでは大変ウエイトを持っています。日本の部分は左側です。日本はこれからだということです。ですから、デジタル印刷だから特別なことではなく、先ほど言いましたようにプレスプリンティングがあり、デジタルプリンティングがあり、お客様のお望みに応えていくことができる印刷の方式、やり方はどうなのかというところがポイントです。
 少なくとも我々はデジタル化もDTP化もアメリカを追いかけてきた。このような状態をみますと、デジタル印刷そのものもやはりアメリカと同じような方向になることは間違いないだろうといえるかと思います。
 
<広告費の推移>
画像をクリックして拡大(PDF)


 これは広告費の推移です。印刷物もその一つではあるのですが、こうやって見てみますと、やはりインターネットも伸びている。しかしながら、印刷がそう大きく減るわけではない。マーケットは変わっています。そんな中でいったい我々はどんな提案をしながらやっていく必要があるのか、というところが課題になってきます。
 当然、我々はそれ以前、社会的責任の環境問題や情報管理の問題など、いろいろなものをやらなければいけない。そんなものも含めて、今度はマーケットに対してどう応えていくのか。要は、お客様の満足度を上げていくためにはどうすればいいのか。そうすることによって連携を勝ち取り、なおかつ仕事(削除)ビジネスを継続していくということになるかと思います。
 
<印刷業界を取り巻くニーズ>
画像をクリックして拡大(PDF)


 これは総花的にまとめたところですが、我々、お客様、広告代理店、印刷製版会社という我々業界そのものを大きくこういう形でくくってみますと、よく我々は「クライアントのために」とか「顧客満足度を得るために」といいますが、本当はクライアントさんはモノを売るとするなら、お客様一人ひとりに対して応えようとしているわけで、クライアントさんの向こうにもさらにお客様がいる、ということを考えながら我々はやっていかなければいけない。それがまさにマーケティングの新しい在り方かもしれません。ここに今日お話しする「One to One」というキーワードが出てきます。
 クライアントさんが満足するのは、お客様に対して効果があったということです。このように多様化した時代の中で、一人ひとりのお客様が印刷物を手
に持って見られる思いや考え方、意欲というものにどうやったら我々は印刷物を通して応えていくことができるのか。その一つの方法が、まさにコンシューマーに向けての「One to One」と考えております。
 我々は、このような背景のもとに、今回、デジタルプリンティングをどうとらえるかというところの原点にあるかと思います。「One to One」そのものがどうではなくて、我々は印刷に携わる業界の人間として果たしてどんな考え方をもって市場に対して対応していくのか、というところのキーワードかと思っています。
 
<ビジネスワークフローの確立>
画像をクリックして拡大(PDF)


 我々は皆様と「デジタル技術」を用い、印刷会社社内の「ワークフロー」を確立して来ました。更に我々に求められるのはお客様の期待に応えるようにデジタル連携をとっていくことだと考えております。
 これは、単純な生産におけるところのワークフローの問題ではなく、いわばビジネスのワークフローを考えてみる必要がある。そのビジネスワークフローを確立してこそ、我々はそのビジネスが継続できる。そして、新たなビジネススキームのもとで新しいビジネスをとっていく。そこにマーケットに目を向けて展開していくというやり方がある。
 それが今日お話しする「One to One」、あるいは「バリアブル」という言葉に結びつく、前段の講演でのまさにダイレクトマーケティングに結びつく。そうい
う一つのツールとスキームを獲得していくという状況に我々はあると思っております。
 前置きが非常に長くて申しわけありませんが、我々富士フィルムグラフィックシステムズ、それから富士ゼロックスの新しいデジタルプリンティングツール、そして それを駆使するための富士フィルムシンプルプロダクツのなかにおけるソフトウエアでもって、我々自体も連携しながらお客様に対して応えていくという形できょうは説明させていただきたいと思っております。
 
 



to セミナー・座談会記録TOP 戻る

to Main to Main