日本フォーム工連・委員会報告

 市場調査委員会
「ビジネスフォーム市場の展望と生き残り戦略」

講師 本沢義正氏 矢野経済研究所研究主幹
平成19年1月23日 新富町 印刷会館会議室
     
〈受講者〉(敬称略)  
市場調査委員会 花田和彦、宮内逸兵、森茂孝、森哲雄、剱路幸
特別参加 守舎雅敏、服部章、巣山幸一、高橋明久、山本政徳
事務局

 平成19年1月23日、フォーム工連市場調査委員会(花田和彦委員長)で「ビジネスフォーム市場 の展望と生き残り戦略」と題した講演を受講した。同委員会は平成19年度事業計画の中で“専門家 を交え市場動向分析を聴取・研究する”としていたが、コンピュータサプライ市場の調査では定評 のある矢野経済研究所から講師を招き、フォーム市場の動向について説明を受けることになったも の。  以下は当日の資料と講演を元に要約したもので、同研究所の好意により会報、ホームページに掲 載が可能となった。
 

講演要録
1.BFの市場規模と見通し
 従来のBF市場
 情報処理・メールサービス(DPS)市場を含めた市場
  ・’05フォーム印刷業界の全体の売上規模は8,150億円、内情報処理サービスを含んだビジネスフォームは4,310億円
   であった。(サプライ用品約2,010億円、その他商業印刷分野等1,850億円)
  ・BFの減少が強まっている中、’05は考えられたほど減少していなかった。
   従来BF:2,800億円(対前年−2%強)
   情報処理サービス:1,510億円(対前年+13%弱)。
  ・背景としては、景気の上昇に加え、個人情報保護法特需、特に金融機関の新しい企画、ニーズの効果があったよう
   だ。ただし、’06年度はその反動もあり、下期は特に厳しい情勢である。
   ・情報処理サービス(DPS)は’95の280億円が’00には780億円と2.8倍になり、’03は7.8%増 と伸びが低下したもの
   の、’04(+13.4%)、’05(+12.6%)とも再び二桁の伸びを示し、’05 は1,510億円とBF全体の35%を占めるにいた
   っている。

中堅以下の企業業況
  ・情報処理サービスのインパクトは大きく、手がけていない企業は7〜8%、大きいところで12〜15 %減少していると
   ころもある。
  ・IT技術、ユーザーとのネットワーク、共同開発体制など資金、人材面で対応しにくい点が主な要因となっている。
今後の見通し(予測)
  ◎情報処理・メールサービス(DPS)
  ◎BF市場の予測見通し
  ・従来BFの減少は更に強まり、’08には’05比13.7%減(年率4.6%)、’10には’05比23.2%減 (年率4.65%)が予想
   される。
  ・’10以降は急速に減少することも考えられ、個人情報保護法や日本版SOX法特需がなく、加えて価 格ダウンが続く
   となれば、抜本的な事業の見直しが必要であろう。この場合は、新しい消費者志向 のビジネス(BtoBからBtoCへ
   の転換)がポイントになってきそうだ。まさにWeb2.0は市場がメー カーから消費者主導になっていることを示してい
   る。
  ・一方、情報処理サービスの分野は’08には’05比33.1%増(年率9.1%)、’10には’05比33.1%増が予想されるが、
   ’08からの伸びは年率4.7%と鈍ってくる。
2.BF業界の構造的状況
  ◎ 二極化、三極化する状況
  ・大手、中堅、中小の三極化、大手、中小の二極化が顕著になってきた。
  ・リストラの断行、積極的な情報投資などがポイントとなっている。
 
3.BF企業の経営戦略
  ・BF企業の経営戦略としては、
  BFの減少に対応した事業の再構築
  情報処理サービス等周辺事業への積極展開
  情報サポートビジネス、情報ソリューションビジネスへの展開 が中心となる。
  ・個別企業で見たときに
  稼働率の向上その他コスト競争力の追及と新規事業への積極的展開、デジタル印刷分
   野で成功、 BF印刷の稼働率も高い。
  BFの内製化、サービスによる付加価値の向上等徹底した粗利管理に加え、ユーザーニーズを捉 えるクイックレ
   スポンスを実現。取引先も極端に1社に偏っていないため、無理をしなければなら ないケースが少ない。
  得意分野での世界的特許など圧倒的な技術力、製品開発力発揮
  情報処理サービス、ICカード、ICタグセキュリティシステムでのトータル戦略展開 などあるが、共通している点は、
   選択と集中、コスト競争力強化、明確な経営の指針提示が重要で あるようだ。
4.提案営業力で体質改善
  ・「提案営業」が改革の決め手となる。
  ・ユーザー自身が変化しており、同じユーザーの幅広い部署にもっと目を向けるべきだ。……自社 の事業内容を広く
   PRすることが重要。 ・他業界の事例として、リクルート社(経常利益1400億円、ユーザーの期待を超える提案に定
   評) 、某出版会社(営業だけでなく編集、総務、経理部門の人たちまで書店周りをしている)などが上 げられる。
5.新規事業での生き残り戦略
  ・新規事業は生き残りの最大ポイントとなる
  情報処理サービス事業の拡大、システム開発にどこまで関われるか?
  タックラベル分野への取組(付加価値が高い)
  一般印刷、商業印刷の拡大(オンデマンド印刷など新しい手法活用)
  ICタグ分野(成長力は未知数)への挑戦などが有望 またSOX法では日立は100億円投資したが、金がかかると
    いうことは、われわれにとってビジネスチ ャンスと見ることもできる。

6.業界再編成、共同事業について
 他業種に比較し、BF企業同士の合併・事業統合は物流、資材を含め可能性が低い(メリットが少 ない)。
  ・むしろ、異業種との間で、提携よりも結びつきのゆるい「企業間連合」を考えるのが現実的だ。
  ・しかし、同業間で情報処理サービスでの共同事業は可能性もあり、模索されている。
  ・地方のBF業界は全体として厳しい状況が続いている。地域限定のビジネスから、特徴を持って 都市で受注活動
   (同業間を含む)を展開する事例も増えてきている。

*講演の元となった矢野経済研究所発刊の2007年版「コンピュータサプライ市場の展望と戦略」( 本文384頁)はフォーム工連会員に割引
  価格が適用されます。お求めの場合は工連事務局(TEL03- 3551-8615)にご一報下さい。



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